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満堂の1500人が聴いた宗派を超えた法話競演|H1法話グランプリ2023現地レポート
いまや、日本仏教界
最大級のイベントとなった
宗派を超えた法話会
H1法話グランプリ。
コロナ禍もあけて
会場の「なら100年会館」には
満員の聴衆。
さらには
日本各地からも
たくさんの人が
動画の生配信にアクセス。
リアルで、ウェブで、
宗派の枠を超えた
お坊さんたちの法話に
耳目が集まります。
混迷の時代だからこそ
2500年もの長い間
人々の苦しみに
対峙し続けてきた
仏教の教えが
求められています。
「当日、現地に行けなかった」
「YouTube動画を観れなかった」
そんな、あなたのために
『こころね』が
臨場感たっぷりに
当日の模様をお届けします。
今大会の見どころ
待望のH1法話グランプリが2年ぶりの開催。場所は今回も仏教発祥の地である奈良です。
コロナ禍により入場規制のかかった前回と異なり、1500名収容の「なら100年会館」が超満員。日本中の仏教ファンが現地に駆け付けました。
加えて、YouTubeによる生配信も実施。今大会は、耳の不自由な方にも法話を味わってほしいという実行委員の想いから、AIによる自動字幕の実装にもチャレンジ。AIがどれだけ仏教用語を瞬時に翻訳できるのか、その精度にも注目が集まりました。
総合司会は、真宗大谷派僧侶の日野史さん(石川県・西照寺)。そして今大会は、MBS毎日放送アナウンサーの福島暢啓さんをお迎えし、よりパワーアップ。スムーズな進行が期待できます。
総合司会を務める日野史さん(左)と福島暢啓アナウンサー(右)
オープニングアクト
H1の見どころのひとつが、圧巻のオープニングアクトです。
暗闇の場内に響き渡るバイオリンと和太鼓の演奏、その奥からは木魚の拍子に合わせて称えられる南無阿弥陀仏のお念仏で、H1の幕が上がります。
バイオリンの木村恵見さんと和太鼓の岩田龍城さん。ともに真言宗僧侶。
導師を務める大会実行委員長・森圭介さん。
国立奈良女子大学書道部の生徒と、石川県の書道家森秀一氏による書道パフォーマンスによって書き入れられた御本尊「釈迦如来」。その後、超宗派の僧侶、登壇者たちによる開眼法要が厳修されることにより、これがただのトークイベントではない、仏さまに見守られながらの法話会であることが示されます。
舞台上に掲げられた御本尊「釈迦如来」
そして、前回大会でチャンピオンに輝いた関本和弘さん(融通念仏宗・大念寺)による開会宣言。
登壇者と聴衆をおりんと棒に見立て、話す側と聴く側の双方がいて、はじめて法話会が成り立つと話します。
開会宣言を行う関本和弘さん
H1の大きな見どころ。審査員のコメント
コンペティションの格は、審査員が決めると言っても過言ではありません。
エピソードZERO(2019年須磨寺開催)から審査員長を務める釋徹宗さん(相愛大学学長・浄土真宗本願寺派如来寺住職)を筆頭に、檀ふみさん(俳優)、いとうせいこうさん(作家・アーティスト)、宮崎哲也さん(評論家・コメンテーター)、露の団姫さん(落語家・天台宗僧侶)といった豪華な面々が、審査員席に並びます。
法話をより深く味わうためにも、審査員のコメントはH1の大きな見どころです。特に、審査員長・釋徹宗さんの鋭いコメントは、10分間で語りきることのできなかった部分を補足する役割を担い、H1界では「慈悲深い激詰め」と言われているとかいないとか。
審査員の先生の講評にも注目が集まる。
さあ、舞台は整いました!
H1法話グランプリ2023。いよいよスタートです。
1.二胡の調べと南無阿弥陀仏
川野真広師
(浄土宗 善福寺副住職・奈良県天理市)
中国の伝統楽器「二胡」を手に持つ川野さん。まずは十遍のお念仏「南無阿弥陀仏」を聴衆とともにお称えし、法話を始めます。
二胡奏者である川野さんが自己紹介の代わりとして演奏したのが、歌手の森山良子さんが亡き兄を偲んで作った『涙そうそう』です。
まるで亡き人の面影を追い求めるかのように空のかなたに伸び、やがて打ち寄せる波のようにわたしたちの足もとに戻ってくる二胡の調べ。亡き人を想う心を自在に奏でる川野さんの音色の美しさに、会場全体が息をのみます。
川野さんは、『涙そうそう』の次の歌詞に、お念仏の教えを見出します。
あなたの場所から
私が見えたら
きっといつか会えると信じ
生きてゆく
極楽浄土にいる亡き人はどんなものをも見通す「天眼通」という力を得て、ずっとわたしたちのことを見守ってくれている。そして「南無阿弥陀仏」のお念仏を称えることで、亡き人と再び会うことができる。
この歌詞には、そんなお念仏の教えのエッセンスがギュッと詰まっています。
「みなさまにも、大切な方、会いたい方がいらっしゃるんじゃないですか。その方のことを思って、どうぞ、南無阿弥陀仏のお念仏を申して下さい。すると、阿弥陀如来さまが光を当てて下さって、極楽浄土で会いたい方と再会できます」
おしまいにも聴衆全員で十遍のお念仏。川野さんの二胡と法話のあとにお称えする「南無阿弥陀仏」は、より深くわたしたちの心の奥底に響き渡りました。
2.なんとかなるよ、大丈夫。
加藤圓清師
(日蓮宗 法音寺副住職・大分県)
とんちでおなじみの仏教アニメ『一休さん』は、室町時代に生きた禅僧・一休宗純をモデルにしたものです。その破天荒でユーモラスな生きざまは、時代や宗派を超えて広く人々に愛されています。
日蓮宗の僧侶である加藤さんも、一休さんが最晩年に弟子に残した「なんとかなるさ、大丈夫」ということばを、ギターの音色に乗せて歌にします。
過酷な修行として知られる日蓮宗の荒行。無事に成し遂げられるかと不安に苛まれていた加藤さんを支えてくれたのは、結婚したばかりの奥さまのひとことでした。
「修行辞めちゃっても、お坊さん辞めちゃっても、アルバイトでもして、家族で暮らしていこうよ。大丈夫だよ」
荒行は、想像以上に過酷だったものの、このことばのおかげで、100日間のきびしい修業を成し遂げられたと話す加藤さん。いまでは「大丈夫」ということばを、お寺に来た人たちに向けて伝えているそうです。
うまく生きていけない人たちに門戸を広げて、「大丈夫ですよ」と安心を与えてくれるのがお寺という場所かもしれません。加藤さんが披露した曲のタイトルも『大丈夫』。仏さまの慈悲深い教えや、お寺という安心の世界を、やさしく、語りかけるように歌います。
法音寺という自坊の名前を体現するかのような、加藤さんの奏でるやさしいメロディと晴れやかな歌声に、会場に集まった多くの人の心が洗われました。
3.弟子と発心とわたし
№3.小谷剛璋師
(真言宗御室派 福王寺住職 岡山県真庭市)
右手の扇子をスマホに見立て、顔を左右に振って上下をつける。抑えの効いた渋い声で、弟子に振り回される滑稽な自分を滔々と語るその語り口は、まるでプロの噺家のようです。
岡山の田舎に生まれた小谷さん。世界遺産に認定された総本山・仁和寺に10年勤めたあと、自坊に戻るものの、平安時代から続く過疎のお寺をどう維持しようかと、頭を抱えます。
そんな矢先、東京からやって来た50歳手前の弟子入り志願者・高橋浄久さん。お坊さんのような珍しい名前は、僧侶になってほしいと願う祖父が名付けたもの。その想いに応えるべく、小谷さんのもとで僧侶になることを即決。名前を「淨休」とします。
この思わぬ新弟子があれよあれよと躍動します。仁和寺で得度式を終えたのち、インドに渡り、インド仏教最高指導者の佐々井秀嶺師に直電して謁見。伝説の遺跡・南天鉄塔の発掘現場で「イエーイ」とツーショット写真を撮り、しまいにはその講演会のために佐々井さんを仁和寺に招聘。しかもそれらひとつひとつをYouTubeでアップしている。
躍動する弟子を岡山の過疎の自坊から複雑な想いで見守る師匠。両者のおかしな対比にあちこちから笑いが起き、小谷さんの繰り出す話芸に場内の空気が昂ります。
そんな滑稽話を通じて小谷さんが伝えたかったのは「発心」。仏教に好奇心を持つことです。
「淨久さんの発心はおじいさんからいただいた名前でした。みなさんにとっての発心とは、何でしょうか」
わたしたちにこう問いかけたあと、発心を起こすためのヒントとして、弘法大師空海のことばを紹介します。
眼、明らかなるときは
道に触れて、みな宝なり
「身のまわりに転がっている発心の種を、すがすがしい心の目で見つけてほしい」と語る小谷さんの法話は、まさに淨休さんとの出会いこそが、小谷さん自身の宝(=発心)だったことを物語るものでした。
※余談ですが、淨久さんの歩みはすべて実話です。ともにインドを旅して、佐々井秀嶺師のもとで出家得度した小野龍光さんが、素心のトークイベントでその模様を詳細に語って下さっています。このご縁にも身震いがしたものでした。
4.あたりまえと、ありがとう
永井義寛師
(天台宗 萬福寺住職 宮崎県国富町)
南国・宮崎県からやって来た永井義寛さん。宮崎訛りのまじったやさしい語り口が、場内をあたたかく包み込みます。
お寺を任された当初は、葬儀や法事など、暗い印象の強かった僧侶という仕事。しかし、地域コーディネーターの方とのご縁から、お寺はみるみる生きている人たちのご縁つなぎの場へと変わっていきました。
子育て支援、子ども食堂、マルシェ…。みんなが集まる楽しいお寺へと変わっていったのは、そこに集まる人たちの「だれかの助けになりたい」「だれかと喜びや幸せを分かち合いたい」という想いが集結しているからだと、永井さんはうれしそうに語ります。
「ありがとうの反対のことばは何だと思いますか?」と問いかける永井さん。
「そういえば、何だろうか」となかなか答えが出てこないわたしたちに向けて、「答えは“あたりまえ”です」と教えてくれます。
わたしたちは、当たり前に朝を迎え、当たり前に会社に行き、当たり前に挨拶をして、当たり前に仕事をします。
これを…
わたしたちは、ありがたく朝を迎え、ありがたく会社に行き、ありがたく挨拶をして、ありがたく仕事をします。
…と言い換える方が、人生楽しそうだぞと、思わず合点がいったのはわたしだけでしょうか。
審査員の露の団姫さんが話すように、山川草木あらゆるものに仏性が宿り、感謝を示す『法華経』の精神、そしていま自分がいる場所でできることを一つひとつしていくこと説かれた伝教大師最澄の『一隅に照らす』ということば。
こうした天台宗の教えを、お寺での取り組みやお子さんとの心あたたまるエピソードをまじえて分かりやすい法話にまとめた永井さん。
最後は会場全体に向かって大きな声の「ありがとう」。情感のこもった永井さんのやさしい声が、とっても印象的な法話でした。
5.園長先生はアジアで1番の力持ち
宮本覚道師
(曹洞宗 龍泰寺住職 岐阜県関市)
圧倒的な体格の持ち主が舞台袖から、のしのしと登場します。
今大会、最も「キャラが立っている」と言っても過言ではない宮本覚道さん。僧侶、園長先生、男梅顔グランプリに加えて、もうひとつの顔がパワーリフティングアジアチャンピオン。いまは世界一を目指して日々トレーニングを重ねているのだそうです。
「挑戦が、人生を豊かにする」その姿を園児たちに見せ続けることが宮本さんのモチベーションの源泉です。
「夢はずっと叶うよ」と言い続けていた若き日の宮本先生。しかしある園児から「夢って本当に叶うの?」と聞かれて、確信をもって「叶うよ」と言えない自分がいました。自分自身が夢を叶えたことがないからです。そんな忸怩たる思いを払拭すべく、一大決心。
「先生はね、日本一の力持ちになるからね」
まずはことばで宣言。そして宣言通りに毎日実践。日々トレーニングを積んでいき、やがて日本一、そしてアジアチャンピオンにまで昇りつめたのです。
目標を持ち、その夢を叶え続けてきた宮本さん。しかし大切なのは、目標の達成や、夢の実現よりも、「いまを一生懸命生きる」ことだと力説します。
中国禅宗の開祖・達磨大師の「廓然無聖」ということばを引用して、次のように話します。
仏の教えには素晴らしいとか素晴らしくないとか、そんな区別はない。大切なのは、自分を信じて毎日を丁寧に、いまを一生懸命に生きること。行いを整えることによって、おのずと心が整う。これが禅の修行です。
「いまを一生懸命に生きると、自分のことが好きになり、幸せになる。それは執着を生み出してしまう“自己愛”ではないですか?」と問う釋徹宗さんに対して「すべての人に本来そなわっている“仏性”です」と答えた宮本さん。
その表情は、なら100年会館に集うすべての人の心を明るく照らすほどに晴れやかで、力強いものでした。
6.お供え物からあふれる故人さまへの想い
梶浦邦康師
(臨済宗方広寺派 瑞雲寺住職 静岡県浜松市)
梶浦さんが取り上げたテーマはずばり先祖供養。仏壇店メディアである『こころね』としては、H1の舞台上で先祖供養のあり方に触れたことを、心からありがたく感じました。
梶浦さんは、先祖供養は日本だけの文化ではなく、世界中で見られる人類共通の営みだと話します。アイルランドのハロウィン、メキシコの死者の日。キリスト教圏でも先祖供養は当たり前のように行われているようです。
大切なのは形式ではなく、心のうちから自発的に湧き出る亡き人を偲ぶ想い。そんな素朴で尊い先祖供養のかたちを、梶浦さんはお参り先のお檀家さんのお供え物に見出します。
缶ビールに、缶チューハイに、柿ピー。仏となった故人さまに、お酒をお供えするのはどうかと思うものの、梶浦さんはそれをほほえましい光景とします。
また、生花が供えられている横にはお孫さんが作ったたくさんの折り紙のお花。筆者も仕事柄、いろんなおうちの仏間にお邪魔するからこそ、お供え物からあふれる故人さまへの想いが、より分かります。
梶浦さんは、こう言います。
「心の中のもうひとりの自分。臨済宗はそれこそを仏と呼びます。そして、お供え物をする時、わたしたちの中の仏心がはたらいています」
故人さまに喜んでもらうためのお供えは、心の中の仏心のはたらきによる。だからこそ、形式や常識に捉われず、心と心を通わせることが大切だと説く、とてもありがたい法話でした。
「法事の時はお坊さんを呼ばずに、自ら般若心経を読み上げます」と語る審査員のいとうせいこうさんに苦笑いしながらも、「形よりも心がだいじ」と答える姿に、その人柄がにじみ出ていました。
7.亡きお檀家さんとともに立つ舞台
髙渕弘明師
(黄檗宗 正受寺新堂 福岡県行橋市)
9歳でお坊さんとなった頃から、ずっと髙渕さんのことをかわいがってくれていたお檀家さん。明るくて、いつも冗談の絶えない方でしたが、そんなおばあさんにも悲しい過去がありました。自慢の一人息子を、原因不明のまま、亡くされていたのです。
辛くなると、おばあさんはいつも髙渕さんにこう洩らします。
「おっさん(「和尚さん」をくだいた呼び方)。このご供養は、息子に届いとんやろうか。息子のためになっとんやろうか」
髙渕さんは、おばあさんのためにいま一度供養について学び直し、『華厳経』の中で説かれている「三種の供養」を見出します。
「利供養」は、亡き方が大好きだったものをお供えすること。「敬供養」は、亡き方を想い偲ぶこと。「行供養」は遺されたわたしたちが善き行いをして努力すること。
そのことをお伝えすると、早速「三種の供養」を実践し始めたおばあさん。
「ポックリ逝って、早く息子のところに行きたい」と弱音を吐きながらも、お仏壇には息子さんが大好きだったサイダーを供え、いつも息子さんのことを想い、そして野菜や花を育てては地域に貢献していたそうです。
そんなおばあさんもいまでは亡き人となり、今度は髙渕さんがおばあさんのために三種の供養を実践する番です。H1法話グランプリへの登壇は、まさにおばあさんへの「行供養」に他なりません。
まるで本人がそこにいるかのようにおばあさんを演じきる髙渕さん。明るくて力強い髙渕さんの声は、まさに一心同体となったおばあさんの声そのものです。
亡き人といまを生きる人がひとつとなった元気な姿に、思わず熱いものがこみ上げてきました。
8.倶会一処。お浄土でまた会える、いま会える。
枝廣慶樹師
(浄土真宗本願寺派 崇興寺住職 広島県福山市)
浄土真宗に「俱会一処」ということばがあります。「同じ場所で、ともに会う」。その場所とは、阿弥陀如来さまに見守られる極楽浄土です。
あなたにとって、極楽浄土とはどんな場所でしょうか?『浄土三部経』には、それはそれは絢爛豪華な世界が描かれていますが、枝廣さんの法話に触れたわたしは、なつかしい人たちが車座になってワイワイやっている、あたたかい日差しに包まれる陽だまりのようなぽかぽかとした場所を思い浮かべました。
そんな陽だまりに、枝廣さんが往生します。仏さまの仲間入りです。
「おうおう住職。あんたもようやく来たんか。まあまあ、ここに座りいや」
こう語りかけるのは、僧侶になりたての16歳だった枝廣さんが、はじめて出仕したお葬式の故人さま。
「あんたあ、わしの葬儀の時、ひどかったのお」
参列者の足を踏んだり、お経を上手く読めなかったり、足をしびらせたり、まさに踏んだり蹴ったりの僧侶としての初陣について、懐かしそうに語り、笑いあう姿が目に浮かびます。
そしておじいさんは最後に、「でも住職、あんた、ようがんばってきたな」と、思春期の真っただ中にありながら、お寺の世界に生きることを覚悟した枝廣さんの生きざまを、労ってくれるのです。
枝廣さんの次のことばが、とっても印象的でした。
決してね、充分なことはできんのです。全然至らんけれどもね、命を終えたそのときに、迎えて下さる方がおられるんだな。そう思ったらね、もうちょっと頑張っていかにゃならんな、ってなことを思ってます。
真宗の教えは、いまを生きている人のための教えだと、枝廣さんは力説します。
阿弥陀如来さまが、そして仏となった亡き人たちが、わたしたちを見守り、待ってくれている。だからこそ、いまを一生懸命に生きられる。
時におかしく、時にしみじみと、おだやかで心地のよい語りから繰り出される浄土真宗のありがたい教え。トリにふさわしい、心あたたまるお見事な法話でした。
投票・座談会・サプライズ
8名のお坊さんによる法話が終わり、いよいよ投票タイム。持ち票はひとり3票。
「だれにしようか~」
「迷ってよう決めれへんわ~」
…と迷う声が、会場のあちこちから聞こえてきます。
会場内の各地に設置された投票箱に、票が投じられていく。
開票結果を待つ間、舞台上では、歴代のH1チャンピオンたちによる座談会。法話ファンにはたまらない至福の時間となりました。
左から、福島暢啓アナウンサー、小池陽人さん(真言宗・須磨寺)、安達瑞雲さん(曹洞宗・長楽寺)、関本和弘さん(融通念仏宗・大念寺)
そしてサプライズは、MBS毎日放送の関岡香アナウンサーによるオンステージ!
福島アナウンサーのプロデュースによる『法話が届くお年頃』を熱唱。会場中が大いに盛り上がりました。
ここまでで一番の歓声の浴びたと言っても過言ではない関岡香さん。表彰式を前に舞台に花を添えた。
受賞者は、男泣きと男梅
そしていよいよ表彰式です。
釋徹宗審査員長の第一声が「過去一番、もめました」とあるように、とてもハイレベルで、甲乙つけがたいと感じたのは、わたしだけではないはずです。
そんな中、みごとに審査員特別賞に輝いたのは宮本覚道さん!
トロフィーを手にする宮本さんは「わたしの方がみなさんにもう一度会いたいです」と感謝を述べました。
審査員のいとうせいこうさんから、賞状とトロフィーが授与される。
そして栄えあるグランプリを受賞したのは、小谷剛璋さん!!
審査員の檀ふみさんも「会場のみなさんの圧倒的な支持がありました」と栄誉を称えます。
グランプリに自身の名前を聞いた瞬間、思わず手を合わせる小谷さん。
左手にトロフィーを持ち、右手で涙をぬぐう姿が印象的だった。
小谷さんの法話の主人公は弟子の淨休さん。当日はご本人も客席から見守り、師匠を祝福するために登壇しました。
「目立ちすぎだ」と、弟子の淨休さんを諫める小谷さん。子弟の共演に会場全体が拍手に包まれた。
H1法話グランプリ2023の受賞者は、グランプリに男泣きの小谷剛璋さん、審査員特別賞に”男梅”の宮本覚道さんが選ばれました。本当におめでとうございます。
フォトセッションにて。
得票数より大切なのは、あなたが結んだ一つひとつの仏縁
最後は、大会実行委員長を務めた森圭介さんによるあいさつ。
この規模のイベントをほぼ100%、お坊さんたちの力だけで築き上げてきたことの苦労は想像を絶します。森さんの表情には安堵感と達成感があふれていました。
森さんが口にしたのは、登壇者、予選にエントリーしたお坊さん、協賛企業、ボランティア、実行委員のスタッフ、そして当日来場された方や、YouTubeで視聴したすべての方々への感謝、感謝、感謝、でした。
こうして幕を閉じたH1法話グランプリ2023。
H1を取材して感じたのは、日本各地、宗派を超えてやって来たお坊さんの話を通じて、さまざまな側面から仏さまの教えに触れられることのありがたさ。大切なのは得票数ではありません。会場で、スマホ越しで、あなたがつむいだお坊さんとのご縁ではないでしょうか。
「あのお坊さんにまた会いたいな」
「あのお坊さんのあの一言が、忘れられないな」
こうした小さなご縁が、数千、数万と生まれたことこそが、H1法話グランプリの価値そのものです。
そして、そのご縁の中に「発心の種」がひそんでいるかもしれません。
最後に、グランプリを獲得された小谷さんの法話の、しめくくりのことばを引用します。
いまここに集まって
お話を聞いてるのだって
ひとつの発心かもしれません。
何年も、何十年も
迷い続けている人でも
その一瞬の発心に触れれば
どんな方でも行動できると
わたしは思うんです。
今日この話を聞いて
みなさんにとっての
発心のきっかけ、気付きになれば
わたしはうれしいです。
覚悟と勇気を持って舞台の上に立った8名のお坊さん、惜しくも予選を通過できなかったもののH1にチャレンジされたお坊さん、実行委員の方々、そして法話に耳を傾けたすべての人々に、リスペクトを込めて、万雷の拍手を贈り、合掌を捧げたいと思います。
そして、この記事もまた、あなたにとっての発心のきっかけになれば、うれしいです。
合掌、南無仏教!
▶H1法話グランプリ公式サイトはこちらから。
▶素心『こころね』による2021年大会レポート記事
『762組もの仏縁がつながる日-「H1法話グランプリ2021」現地レポート』
取材・撮影・文 玉川将人
撮影 粟生密有