こころね

中学生と学ぶ雅楽の世界。トライやる・ウィーク IN 亀山本徳寺

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「トライやる・ウィーク」は
兵庫県民にとってはおなじみの
中学生たちの一週間に及ぶ
職業体験活動です。

この秋、姫路市の亀山本徳寺は
はじめて生徒たちを受け入れました。

「こころね」取材班も
中学生とともに
雅楽の世界を学んできました。

トライやる・ウィークで雅楽体験

11月10日水曜日。午後1時。亀山本徳寺の本堂に地元山陽中学校の生徒たちが並んで正座します。

目の前には豪華な法衣を身にまとうお坊さんたち。これから雅楽を演奏する真宗文化研究会の「楽楽会」の方々です。

 

山陽中学校2年生のみなさん

真宗文化研究会のみなさん

「楽楽会」は、兵庫県播州地区の浄土真宗本願寺派僧侶たちによる「真宗文化研究会」の中にある雅楽を楽しむ会。今年3月末日には姫路文化センターで大法要を営み、「こころね」取材班も密着取材しました。(取材記事はこちら

仏教伝来の飛鳥時代から今日まで脈々と受け継がれる雅楽を体験できるまたとない機会。現代の中学生たちは伝統音楽の音色をどのように感じとるのでしょうか。

令和3年3月31日に行われた「声明と雅楽の調べ」
(撮影:素心メディア事業部)

雅楽ってなに?

雅楽の説明をして下さったのは西蓮寺の福田智成副住職(高砂市)。まずは、雅楽の基本的な知識を教えてくれました。

雅楽は3つの管楽器、3つの打楽器、2つの弦楽器によって奏でられる日本の古典音楽。5世紀ころに大陸から伝わったものにさまざまな音楽や舞が融合して現在の形ができ上がったと言われています。神社や寺院などで演奏され、最近では東儀秀樹さんの活躍により、広く人々に知られています。

「遣隋使や遣唐使によって大陸からやってきた文化はほかにもたくさんありますよ」と福田さん。「白菜、ピーマン、すいか、全部中国からの伝来のものです。そのほかにも土木の技術、武術などもそうです」

歴史の授業で習ったことと重なるところも多く、生徒たちは配られた資料を見ながら、熱心に福田さんの話に耳を傾けます。

福田智成さん

 

雅楽と衣

意外に知られていないのがお坊さんの衣。出仕する法要によってさまざまな衣の種類があるのだそうです。

管物(管楽器)の人は狩衣かりぎぬ平安貴族たちが狩りをする時に着たことからこのように呼ばれています。

狩衣は平安時代の公家の普段着。頭には烏帽子を被ります。

そして打物(打楽器)の人は、黒衣こくえ五条袈裟ごじょうげさ切袴きりばかまという組み合わせ。五条袈裟は大法要が執り行われるたびに作られる記念の物を用います。

本願寺第十一代顕如宗主の400回忌法要の際に作られた記念五条袈裟。顕如上人は石山合戦で織田信長と戦を交えたことでも有名です。「五七の桐」紋が入っています。

親鸞聖人750回大遠忌法要の際に作られた記念五条袈裟。親鸞聖人が越後に流罪された時も荒波の船の中で一心に「南無阿弥陀仏」を称えていたことから、波の紋が用いられています。

親鸞聖人御誕生800年、立教開宗750年の年に作られた記念五条袈裟です。ちなみに令和5年は御誕生850年、立教開宗800年という記念の年に当たり、大法要が営まれます。

この日、導師を務める西法寺の山本英信住職(高砂市)は、色衣しきえ七条袈裟しちじょうげさ切袴きりばかまという最も正式な服装である「礼装れいそう」を身にまといます。

この七条袈裟には、迦陵頻伽(雅楽演奏をしている天女)や鳳凰などが描かれています。

雅楽の楽器

そしていよいよ楽器の説明。はじめて見る雅楽の楽器をひとつずつ分かりやすく解説してくれました。

鞨鼓(かっこ)

鞨鼓は比較的小高い音を発します。鞨鼓を叩く音でスピードを調整する、いわば指揮者の役割を担っています。ちなみに鞨鼓は『叩く』『打つ』ではなく、『掻くかく』のだそうです。下から吸い上げる感じで鼓の音を響かせます。

 

太鼓(たいこ)

雅楽の太鼓は「撃つ」と呼びます。撃ち方が2つあります。軽く叩く「」と、強く叩く「」。皮には美しい彩色が施されていますが、ばちが当たる部分はどうしても彩色が剥げてしまいます。

打面は表面の彩色が剥げている

鉦鼓(しょうこ)

鉦鼓は「ちん」「ちん」「ちゃちん」と、金属独特の音を奏でます。こちらは『叩く』でも『掻く』でも『撃つ』でもなく『擦るする』のだそうです。音を出す時のニュアンスを「掻く」や「擦る」などと、身体の動きをイメージしやすく表現されているのがなんとも興味深いです。

 

笙(しょう)

笙は「ザ・雅楽」な音色を奏でます。17本の細い竹を縦に丸く並べている様が鳳凰の翼を立てた姿に似ていることから「鳳笙ほうしょう」とも呼ばれています。

昔の人は天から差し込んでくる音と表現し、羽衣をまとった天女が羽ばたいている姿を思い浮かべたそうです。

福田さんによると、西洋のパイプオルガンもその起源は笙なのだとか。

笙は常に温めておくことで繊細な音色を奏でる。

導師の山本さんが身に着けている七条袈裟には笙を持って空を舞う天女の姿が施されている。

篳篥(ひちりき)

篳篥は漆を塗った竹製の縦笛。雅楽の主旋律を担当し、大地の響きを表すものとされます。「このリード(吹き口)はあしという植物を乾燥させて、刀で削って自分で作ってるんですよ」と福田さん。中でも大阪府高槻市の鵜殿地区の葦が最もいいのだそうです。

ちなみに「あし」という言葉は「良し悪しよしあし」の「」しを連想させるということで「よし」と呼ばれることもあります。

龍笛(りゅうてき)

龍笛は雅楽で用いられる横笛のことです。主旋律の篳篥をより豊かに彩る役割を担います。その名の通り、龍笛は龍の鳴き声を奏でるとされ、笙が天、篳篥が大地、その間を龍が舞い、ひとつの世界を表します。

楽器を触ってみる

ここまで福田さんの話をまじめに聞き入る生徒たち。

「じゃあみなさん、楽器に触れてもらいましょう」と、演奏体験になると、生徒たちの緊張も解け、本堂内の空気も和みます。

 

お坊さんになった気分でビシっと法要

一通り打楽器を奏でたあとは生徒と僧侶と一緒に三奉請さんぶじょうをお唱えをします。三奉請とは、阿弥陀如来、釈迦如来、そして十方無量の諸仏をお迎えするためのことばで、雅楽の音色に合わせて唱えます。

「お坊さんになった気分でビシっとやるんやで」と、導師の山本さんから華籠けろうと呼ばれる仏具が配られ、その中にきれいな花びらのような華葩けはが配られます。これを散らして仏さまをお迎えするのです。

『仏説阿弥陀経』で浄土の鳥とされる6つの鳥が描かれている(画像提供:西法寺・山本英信住職)

生徒たちにインタビュー

雅楽体験を終えた中学生たちにお寺で行うトライやる・ウィークについて感想を聞いてみると、ポジティブな声が挙がりました。

「お寺、楽しかったです」
「普段できない体験がたくさんできました」
「お坊さんの裏舞台を見ることができた」
「次は夜に来て、肝試しをしたいです」
「夜に来たら、幽霊出るで」
「出るとしたらお寺やから仏さんや」
「仏さんなら安心やで」

お寺をあとにする生徒たちに、亀山本徳寺の大谷昭智副住職は、コロナ禍で人が集まりにくい社会の中で、友達を大事にするようにと語り掛けていました。

「雅楽は、人が集まると集まった分だけきれいな音が出る。出会いのことを仏教では「縁」と言います。縁があって、仲間が集まって、みんなで大きいことして、心が通じ合うと嬉しいやん。だからみんなも友達を大事にしよう」

最後は、浄土真宗の法話の最後によく用いられる『恩徳讃おんどくさん』を雅楽演奏の中で唱和し、合掌礼拝、南無阿弥陀仏。

「来年もまた来たい?」という筆者の問いに、とある生徒はこう答えてくれました。

「僕ら来年は3年やから来れへんけど、次の年の子たちにはおすすめしたいです」


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取材・構成・文 玉川将人