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2024.02.06

H1王者につながる4つの機縁|もう一度会いたいお坊さんに会いに行く旅【小谷剛璋さん✕高橋淨休さんロングインタビュー・予習編】

H1王者につながる4つの機縁|もう一度会いたいお坊さんに会いに行く旅【小谷剛璋さん✕高橋淨休さんロングインタビュー・予習編】

H1法話グランプリ2023。
見事チャンピオンに輝いた
小谷剛璋ごうしょうさんの法話は、
発心に触れて仏門を叩いた
弟子の「淨休じょうきゅうさん」について。

素心・こころねは、
小谷さんと淨休さんへの
ロングインタビューを
お届けいたします。

でもその前に
隠された情報や物語が
めちゃくちゃ多い
おふたりのインタビューを
より深く楽しんでもらうために
小谷さんをH1王者に
導いた4つの機縁

「高橋浄久」
「JQクエスト」
「佐々井秀嶺」
「南天鉄塔」

…について解説いたします。

法話の前提となる
これらを抑えておくことで
インタビュー本編を
100倍楽しめること
間違いなしです!

淨休さんの“前世”

小谷さんのもとで僧侶となった弟子の淨休さん。もとの名を「浄久きよひさ」と言います。

法話の中で少しだけ語られていたのは

「東京でエンタメの仕事をしている」
「人の煩悩と向き合ったような仕事をしている」

…ということだけ。いったいどのようなキャリアを積まれてきたのでしょうか。

出家前の高橋浄久さん(本人提供)

高橋浄久きよひささんは、1974年愛媛県生まれ。幼いころからマンガやアニメやゲームに親しむ大のエンタメ好きです。日本大学芸術学部(日芸)に進学して、映画を学ぶ傍ら、落研に籍を置きます。

ちなみに、日芸の映画学科といえば、『ゴジラ』の本田猪四郎監督、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季さん、俳優の真田広之さんや池松壮亮さんなどを輩出する名門。また、日芸の落研も、放送作家の高田文夫さん、映画監督の森田芳光さん、落語家の立川志らくさんや、笑点メンバーの春風亭一之輔さん(淨休さんの後輩)といった面々を輩出する、こちらも落研界の名門中の名門です。

その後、テレビ業界などで映像関係の仕事に従事し、2020年には歌手の広瀬香美さんのYouTubeチャンネルのプロデューサーに抜擢されます。広瀬さんの「歌ってみた動画」は動画再生数100万回越えを連発し、コロナ禍でライブ活動の自粛を余儀なくされるJ-POP界を席巻します。

広瀬さんのバズの仕掛け人は淨休さんだった。

一方で、スタートアップ企業を立ち上げ、IoTプロダクト(インターネットに接続された製品)の開発に着手。「祈り」をテーマにしたIoT鳩時計『OQTA』をリリースし、こちらも経産省主催のビジネスコンテストで受賞を果たします。

法話の中でも語られていたように、浄久という名前はおじいさんが「お坊さんになってほしい」との想いから名付けたもの。その想いが届いたのか、若いころから仏教に興味を抱いていたという浄久さん。小谷さんとのご縁によって、迷うことなく仏道の世界に足を踏み入れ、その名を浄久から淨休じょうきゅうへと改めることとなるのです。

カジュアル出家のインド旅『JQクエスト』とは

小谷さんの法話では、インドで躍動する弟子の淨休さんの姿が語られますが、旅の模様は、YouTube動画『JQクエスト』によって定期的に配信されました。

SNSのフォロワーにアンケートをとりながら、その時のノリとご縁で次の行き先を決める。行き当たりばったりな旅の様子を、現地のホテルでMacbookを開いて編集し、配信していったのです。

そうやって辿り着いた街がナグプール。そこで、運命的な出会いを果たします。インド仏教最高指導者である日本人僧侶・佐々井秀嶺さんです。

生ける伝説・佐々井秀嶺師をポップに描いたサムネイルに衝撃が走る。

カメラマンとして随行していた親友・小野裕史さんは、運命に引っ張られるかのように、佐々井さんのもとで出家して、名前を「龍光」とします。その様子を高笑いしながら見守る淨休さん。

そして、佐々井さんに連れられてふたりが足を踏み入れたのが、かつて南インドに存在したと言われている伝説の仏塔、南天鉄塔の遺跡だったのです。

インド仏教最高指導者・佐々井秀嶺師とは

佐々井秀嶺さんは、1935年岡山県生まれのインド僧です。日本で生まれ、真言宗の僧侶として出家得度し、タイ留学を経て、31歳でインドへ。龍樹菩薩による夢のお告げを受けて、インド中部のナグプールに移り、約55年間に渡り、衰亡の危機にあったインド仏教を再興させた第一人者です。

弱者にとことん寄り添い、差別問題に対して徹底的に闘う姿勢を見せ続ける佐々井さんには民衆からの圧倒的な支持が集まります。

ヒンドゥー教がマジョリティのインド社会において、仏教徒は差別の対象として、長く虐げられていました。そんな中で佐々井さんは仏教の平等主義を掲げて、カースト制度に苦しむ民衆たちを救済し、鼓舞し続けます。

人口14億人のインドにおいて、信者数約50万人にまで減退していたインド仏教は、佐々井さんの手によってよみがえったとも言われており、現在の信者数は約1億5千万人にも及びます。

画像提供:小野龍光さん

佐々井さんの半生については、以下の本や動画がおすすめです。

●山際素男さん『破天』(光文社新書)
●白石あずささん『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』(文芸春秋)
●小林三旅さん『男一代菩薩道』(YouTube動画)

南インドにある伝説の遺跡・南天鉄塔とは

南天鉄塔とは、かつて南インド(南天竺)にあったとされる鉄製の仏塔のことで、仏教の教えが仏さまから人に伝わったとされる、仏教史におけるとても重要な場所なのです。

約2000年もの長きにわたり、伝説の仏塔とされていた南天鉄塔ですが、この所在を明らかにしたのが、なんと佐々井さんだったのです。

佐々井さんが32歳の時、インドを離れて日本に帰国しようと考えていた夜のことです。佐々井さんの夢の中に、龍樹菩薩(2世紀ころに生きた実在のインド僧)が現れ、次のように告げます。

我は龍樹なり。汝速やかに南天竜宮城へ行け。
汝の法城は我が法城。我が法城は汝の法城なり。
南天鉄塔もまたそこに在り。

そうして佐々井さんが向かったのがナグプール(ヒンディー語で「竜宮」の意味)。それから30年後、ナグプール近郊のマンセル遺跡付近に南天鉄塔が実在していることを確信し、発掘作業を開始。そこに現われたのは世界遺産級の仏教遺跡だったのです。

現在の南天鉄塔の様子も、『JQクエスト』で配信された。

ちなみに、南天鉄塔において龍樹に授けられた真言密教の教義は、竜智、金剛智、善無畏、不空、一行、恵果と続き、弘法大師空海に相承されて、日本に持ち込まれます。

空海は真言宗の開祖ですが、真言宗御室派の本山・仁和寺には「南天鉄塔図」が飾られており、修行中の小谷さんは毎日、伝説のものとされる南天鉄塔図を目にしていたとのこと。

さあ!ここまでの予備知識を蓄えた上で、小谷さん、淨休さんの笑いたっぷりのインタビューをお楽しみください!


▶小谷さん✕淨休さんインタビュー【前編】
連鎖するご縁。カジュアル出家が仏教を変える⁉

▶小谷さん✕淨休さんインタビュー【後編】
みんなで弘法大師になればいい。二人三脚で臨んだH1王者の舞台裏

▶H1法話グランプリ現地レポート
満堂の1500人が聴いた宗派を超えた法話競演

▶福王寺の公式ウェブサイトはこちらから。


取材・構成・文 玉川将人

撮影 粟生密有

 

 

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