TOP記事一覧>記事

Article読み物

2026.06.21

「みほ」はどうして「みほとけ」に?アイドルからお寺仏像大好き芸人への転身|みほとけさんロングインタビュー(前編)

「みほ」はどうして「みほとけ」に?アイドルからお寺仏像大好き芸人への転身|みほとけさんロングインタビュー(前編)

お笑い芸人であり
お寺・仏像研究家として知られる
みほとけさんが
ついに『こころね』初登場!

「アイドル・仏像・お笑いと
常に自らの”好き”を
自分の中に取り込みたくなる」
そのように語るみほとけさんの
これまでの歩みを
たっぷり真面目に伺いました。

あこがれのものになりたい衝動
アイドル時代の苦悩
彼女を救った数々の仏たち
そして「みほ」から「みほとけ」に。

ロングインタビューの前編です。

「好き」を貫いて生きていく

—― お寺仏像大好き芸人として知られるみほとけさん。YouTubeでたくさん配信をされ、本も出され、西国三十三カ所PR大使も務めておられ、すばらしいご活躍です。

ありがたや、です。

—― 書籍『みほとけの推しほとけ』の序文でも書かれていましたが、これまでの歩みをふり返ると、常に「好き」を貫かれている印象です。

アイドルを目指してAKB48のオーディションに合格したものの、家族の反対でその道をあきらめて、大学に進学したあとにミス鎌倉をさせていただきつつ、それでも夢をあきらめきれずに地下アイドルをやったりと…。

2016年から1年間務めたミス鎌倉時代のみほとけさん。

—― そこから、お寺仏像大好き芸人になっていったいきさつにとても興味があります。

はい。鎌倉に生まれてお寺ばかりの街に育ったこともあって、お寺や仏教への親しみは幼い頃からあったんです。そして、高校の修学旅行で京都の六波羅蜜寺に行きまして、そこで衝撃的な出会いをします。空也上人です。

—― 10代や20代で仏像好きって、正直珍しいと思いますが、同年代で共感できる友達はいましたか?

いなかったですね。ただ、仏像仲間こそいませんでしたけど、まわりにオタクはたくさんいました。声優オタク、絵画オタク……。女子高だったので、男子の目線がない分、変人であることが価値だったんです(笑)

高校2年生の修学旅行で衝撃を受けた空也上人。その後、六波羅蜜寺より公式サポーターに任命される。

「みほ」から「みほとけ」へ

—― ここまでのお話を聞くと「仏像オタクのアイドル」でよさそうなものですが、なぜお笑いの道へ?

本当はアイドルになりたかったんです。でもどんなにがんばっても芽が出ず、自分には向いてないんだなということを実感していました。仮にアイドルになれたとて、市場にはすでにたくさんのライバルたちがいるわけですし、もっと自分にしかない武器を持たなければと自分自身を見つめ直した時に、私にはたくさんの仏さまたちがいてくださったんです。

—― そこから仏像を広める活動を?

はい。SNSで仏像に関する発信をするなど、誰にも頼まれていないのに勝手に広報活動を始めました。その頃から本名の「みほ」と、大好きな「ほとけ」を合わせて、「みほとけ」と名乗るようになりました。

—― 「みほ」から「みほとけ」への転身ですね。

実際に仏像やお寺の魅力を発信してみると、これが性に合っていました。「かわいい私を見て」よりも「カッコいいこの仏像を見て」の方に、世間は振り向いてくれたんです。

—― なるほど。でも、なぜフィールドをお笑いに?

どうやったら仏像の魅力が伝わるだろうかと考えたんです。すると、仏像タレントの大先達としてみうらじゅんさんがおられました。みうらじゅんさんの魅力は、好きなものをおもしろく伝えるところです。信心があるけど不真面目、そこがいいんですよね。

—― 「おもしろく伝える」がポイントだったのですね。じゃあ、今の”みほとけスタイル”はみうらじゅんさんの影響を強く受けている?

みうらじゅんさんのようになろうとは思いませんでしたけど、その手法をかなり研究させていただきました。

—― そうでしたか。

あと、地下アイドルで苦労していた頃に芸人さんの深夜ラジオにすごく救われて、お笑いっていいなと思っていたんです。「だったら私もお笑いで仏像の魅力を伝えてみるか」と舞台に挑戦してみると、これが思いのほか反応が良くて、「あ、これはいけるな」と思いました。

なりきりは情熱の無駄づかい

—― みほとけ活動を始めて9年くらいになるとのことですが、「仏教に興味のない人たちにもちゃんと届いたぞ」と手ごたえを感じたものってありますか?

やっぱり「仏像のなりきり」ですね。はじめは超手作りだったんです。野菜を使ったり、段ボールで光背を作ったり、レースのカーテンを袈裟にしたり。100均と家にあるもので仏像になりきるというチャレンジをしていて、それが一番反響がありましたね。

法隆寺・釈迦三尊像の仏像なりきり

葛井寺・千手観音菩薩坐像の仏像なりきり

—― なぜ、仏像のなりきりが反響を集めたのだと思いますか?

クオリティは手作りでも、それを本気でやってる姿をおもしろがってもらえたのだと思います。突き抜けて、変なことやって、情熱を無駄づかいしている感じが(笑)

—― 情熱の無駄づかい。めちゃくちゃいい表現ですね。

そっちに行くんかいと。お寺が好きなら四国遍路に行くとか、そんな情熱の使い方もあると思うんですけど、お前はそっちに行くんかいと(笑)

—― アイドルにしても、仏像にしても、憧れたものになりきりたい性格なのかもしれませんね。

たしかにそうですね。アイドルが好きだからアイドルを目指したし、仏像が好きだから仏像になりきったし。好きなものに対して、「自分の中に取り込みたい」「その姿を他人様に発表したい」という欲求が私にはあるようです。

形から心へ。信心の芽生え

—― みほとけさんは、「仏像やお寺などの目に見える形あるもの」を通じて仏教の魅力を伝えておられますが、「目には見えない仏教の教えや心」みたいなものが、ご自身の生き方に落とし込まれている実感はありますか?

生き方に落とし込めているかまではよく分からないですが、信心の芽生え的なきっかけは、思いつく限りで、ふたつありますね。

—― ぜひ伺いたいです。

ひとつは、西国三十三か所のPR大使をさせていただいたのが大きかったです。西国霊場というのは、約1300年続く観世音菩薩さまをお祀りするお寺への巡礼のことなんですけど、実際にお参りしてみると、ご本尊さまを直接見ることのできない「秘仏」のお寺もたくさんあるんです。

—― 仏像好きとしては、仏像を直接拝めないのはとても残念ですね。

私もはじめはそう思っていたんです。でも、境内の空気を吸う、お寺の方とお話しする、お寺の歴史を知る、というようなことを通じて、身体全体で感じられる感動というものがあるんだなあということに気付かされました。

—― なるほど。仏像を入り口にしなくても、感じられるものがあったのですね。

日常を生きていると、目の前のことに捉われたり、だれかと喧嘩してワ―っとなったりと、自分を見失ったりと、まあ、いろいろとあるじゃないですか。

—― そうですね。

でも、そんなことがありつつも、お寺に来ると、皮膚に包まれたひとりの人間として、確実に自分は今ここにいるんだなという手応えを感じられる。「そっか、だからお寺は気持ちいいんだな」と、西国の観音さまを巡りながら納得したんです。

2024年から、日本最古の巡礼道である西国三十三カ所のPR大使に任命される。

—― 形から入って心に至る。すばらしい気づきだと思います。

もうひとつは、お坊さんたちの生き方ですね。この活動をしていると、ありがたいことにたくさんのお坊さんとの交流があります。彼らと話していると、仏さまへのリスペクトや信心っていうものがナチュラルに生活にしみこんでいるんだなあと、肌で感じるんです。

—― みほとけさんには、信心を携えて生きるお坊さんたちがどのように映ったのですか?

生活者としての感覚は、私たち一般人とお坊さんも同じなんです。ただ、生活の基準点に仏さまがおられる。これがものすごく大きいなあと。

—― 生活の基準点に、仏さま?

そうなんです。なにか困ったことがあっても「お釈迦さまならどう言うだろうか」「うちには阿弥陀さまがいるからね」と、心の支えというか、立ち戻る場所があるんです。仏教を信仰するってきっとこういうことで、仏さまがいて下さることで、ハートが強く、しなやかになれると思うんです。

宗派を超えたさまざまな僧侶との交流を深めるみほとけさん。画像は仏教イベントでの司会の様子。

—― みほとけさんも、アイドルからお笑い芸人への転身を決めた時に、たくさんの仏さまが心の支えになってくれたのですか?

その時はまだまだ信心を内面化するほどではなかったです。ただ、仏像好きであることが、私自身の救いになってくれました。

—― と、言いますと?

アイドル時代は、何者でない自分をさらけ出して自分を見てもらおうと必死でしたけど、それがうまく行かず、ただただ否定される感覚がありました。

—― はい。

でも、お寺や仏像という「推し」を持っているおかげで、私にはまだまだ魅力が残っているぞと自らに言い聞かすことができたんです。誰も気付いていない仏像の魅力を私は知っている。私にはまだまだできることがある。そんな私は強いぞと。そういう意味では、仏さまたちが大きな支えになってくれていたと言えるかもしれませんね。


お寺仏像大好き芸人として着実に活躍の幅を広げているみほとけさん。後編では、みほとけさんが初プロデュースする前代未聞の「仏教イベント」をフックに、「仏教と推し」「仏教とエンタメ」について、さらに深くお話を伺います。

後編記事『推しと祈り。みほとけが贈る「仏教ごちゃ混ぜエンタメフェス」』はこちらから!


みほとけさん プロフィール
1994年、鎌倉市生まれ。慶應義塾大学看護医療学部卒業。お寺仏像研究家 芸人。
2009年、AKB48の9期生オーディションに受かったことがあるが、親の反対と学校の規則により辞退。高校2年生から仏像オタクになり、大学在学中から地下アイドルの経験を経て「仏像をもっと面白く喋れる人になりたい」とピン芸人として再デビュー。
年間500以上のお寺を訪れており、拝観した仏像は1万体を超える。西国三十三所PR大使。著書に『みほとけの推しほとけ』(笠間書院)。

▶YouTube『みほとけちゃんねる』はこちら

▶みほとけさんの公式Instagramはこちら

▶みほとけさんの公式Xはこちら


取材・構成・文 玉川将人

※記事中の画像はすべて、みほとけさんご本人よりご提供いただきました。

 

 

一覧へ