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【コロナ禍のメンタルヘルス】お仏壇がメンタルヘルスに有効な3つの理由-臨床心理士のお坊さんに訊く(後編・仏教編)
声を大にして言いたい。
お仏壇って、
メンタルヘルスにすごく効くんですよ。
そう力説するのは、
臨床心理士の僧侶・武田正文さん。
新型コロナウイルスへの恐怖。
先行きの見えないことへの不安。
そして、自粛疲れ。
そんな私たちの不安定な心を、
お仏壇が整えてくれるのだそうです。
少しでも、みなさんの心が
ほんわか和らいでもらえるよう、
コロナ禍のメンタルヘルスについて
武田さんにお話を伺ってきました。
前編では、心理学の観点から
心のセルフケアについて
そしてここからは、仏教者として
コロナ禍を幸せに生きる考え方について
じっくり語っていただきます。
武田正文さんは、高善寺(島根県邑南町)の副住職の傍ら、臨床心理士としてさまざまな病院や学校などの公的機関でカウンセリングを行っています。
一方でYoutuberとしての活躍もめざましく「武田正文の仏心チャンネル」はチャンネル登録者数1万人に迫ります(令和3年4月30日現在)。
前編の記事がまだの方はこちらから。
【コロナ禍のメンタルヘルス】誰もが今すぐおうちでできる心のセルフケア−臨床心理士のお坊さんに訊く(前編・心理学編)
お仏壇がメンタルヘルスに有効な3つの理由
私がよく門徒さんや講演先で話すことなのですが、お仏壇って、メンタルヘルスにものすごく効果的なんですよ。
― そうなんですか!?
これには3つの理由があります。
― 3つの理由。
はい。「ルーティンを作りやすい」。「読経が身体にいい」。そして「仏さまから見られているという感覚」です。
― 仏壇屋メディアとしては、これはものすごく興味があります。しかもお坊さんのポジショントークではなく、心理士としての意見であればなおさらです。順番に聞かせてください。
まずはルーティン。これは分かりやすいですよね。毎朝お仏壇の前に座って、「ちーん」とおりんを鳴らして手を合わせる。これを毎朝やることで、一日の中でリズムがひとつ出来上がる。
― はい。
次に読経。これがね、身体に、というか、脳にものすごくいいんです。
― ほほう!
音読が脳にものすごくいいというのは色々なところで言われていることなんです。目に見たものを、頭で考え、口にして、声として出す。まさにお仏壇での読経ってこれにすべて当てはまるんです。
― 声を出すのが身体にいいというのは、なんとなくイメージできます。
音読する機会って、日常生活の中でなかなかないですよね。でも、仏壇ならそれが自然にできるんです。
― なるほどです。最後の「仏さまから見られているという感覚」というのは?
はい。これがものすごく大切です。ルーティンを作るだけなら目覚まし時計でもいいわけですよね?
― ええ。
そして、音読だけならどんな本でもいい。
― そうですね。
でも、それだとやっぱり物足りないんです。語りかける対象がいること、しかもそれが仏さまであることに意味があります。
― なるほど!
仏さまはあなたのことを見守って下さる存在です。そうした、「あたたかい視線」「支えられている自覚」みたいなものが、ルーティンや音読をよりポジティブなものにしてくれます。
― しかも、お仏壇の中には両親や祖父母、ご先祖様がいますもんね。
そう。仏さまもご先祖様も、みんながあなたを見守っている。その感覚が孤独感を解消し、自分自身を客観視させてくれるんです。
「仏壇がメンタルヘルスにいい」。仏壇店メディアとしてこんな嬉しい話はありません。
縁起 人は人とのつながりで生きていける
― 仏教者として、心理士として、ここ最近のコロナ禍の状況をどのように見ておられますか?
私の周りでも、そしてネット上でも、皆さん不安を抱えている。社会全体がイライラしているこの状況はとても怖いなと思っています。
― どんなところにその怖さを感じていますか?
他人に向けられることばから優しさが見られなくなっていますよね。
― リアルでも、ネットでも?
はい。そうした状況を一僧侶の私がいますぐ何かを解決できるわけではありません。それでも「他人に優しくしようよ」という言葉は発し続けたいですね。
― 心強いですし、頼もしいです。
たとえば私の好きな「和顔愛語」という仏教語。おだやかな笑顔と優しい言葉で接しましょう、という意味です。
― できそうで、なかなかできない。でも、それをひとりひとりが心がけるだけで、社会はぐっと明るくなるでしょうね。
絶対に、そうですよ。
― 周りの人に笑顔や優しさを向けるためには、まずは自分自身の心が落ち着いて、余裕がないといけない。だからこそ、寝て、ルーティンを保って、人と喋って、運動して、そして楽しいことして、心を整えるんですね。
おっしゃる通り。それが巡り巡って社会のため、さらに巡って自分のためになりますからね。
― はい。
東日本大震災の時には「絆」の大切さが語られました。でもいまは「ソーシャルディスタンス」。距離を取りなさいよ、と。自分の身を守るために距離を取るのですが、その結果、つながりが薄れてきてしんどくなっちゃった、というのが今だと思うんです。
― そうですね。本当に難しいですね。
仏教のことばに「縁起」というものがあります。すべての現象は他との相互の関係性によって成り立っているのです。人とのつながり、仏さまやご先祖様とのつながりが、よりよく生きるためにはものすごく大切なんです。
― オンラインや仏壇も、つながるためのツールですよね。
そうです。いまこうして私と玉川さんが話をできているのも、人類が作った叡智のおかげです。人間の力で、なんとかなるんだと思って、前向きに、楽しいことに目を向けて、この苦しい状況を乗り切っていきたいですね。
Youtube動画を撮影する武田さん。リアルでもネットでも、人とのつながりを広げながら仏教の教えを説かれている。
新型コロナウイルスにかかってしまった人、その疑いがある人、コロナにかかってはいないものの生活の変化を余儀なくされている人。さまざまな場面で日本全体が、つらく苦しい想いをしています。
しかし何より、最前線で頑張って下さっている人たちのためにも、不急不要の外出は控え、ささやかながらも、人や仏さまとの「つながり」を感じられるゴールデンウィークにしたいですね。
武田さんの言葉を参考に、ぜひとも素敵な連休をお過ごしください。
武田さんはご自身のYouTube動画で、心の問題や生き方について、仏教と心理学の両面から、役に立ち、心に響く情報を発信しておられます。ゴールデンウィークで時間があるこのタイミングに、興味がある方はぜひともご覧になってみてください。「武田正文の仏心チャンネル」はこちらから。
構成・文 玉川将人