こころね

【コロナ禍のメンタルヘルス】誰もが今すぐおうちでできる心のセルフケア−臨床心理士のお坊さんに訊く(前編・心理学編)

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ゴールデンウィーク直前の4月25日
兵庫県に3度目の緊急事態宣言。
思い通りにいかないことへのイライラ。
見通しのつかない未来への不安。
春のおだやかな陽光と
あるはずだった連休をわき目に
ストレスがじわりと私たちにのしかかります。

心の不調を訴える人が少なくない中
『こころね』は
ひとりでも多くの方の
心のケアのお役に立ちたい。
そんな想いから、
すぐにある方に連絡を取り、
インタビューを快諾してもらいました。

お話を伺ったのは
心理士で僧侶の武田正文さん。
心理学と仏教の両面から
コロナ禍で疲弊する
私たちの「こころ」の問題を
お話し下さいました。

前編は、心理学の観点から、
誰もがすぐにでもできる
心のセルフケアについて
教えていただきました。


武田正文さんは、高善寺(島根県邑南町)の副住職の傍ら、臨床心理士としてさまざまな病院や学校などの公的機関でカウンセリングを行っています。

一方でYoutuberとしての活躍もめざましく「武田正文の仏心チャンネル」はチャンネル登録者数1万人に迫ります(令和3年4月30日現在)。


一億総ストレス社会 みんなが同時にヤバいんだ!

― 兵庫県では、3度目の緊急事態宣言が発令されました。

兵庫県のみなさま。本当に大変な想いをされているかと思います。

― 武田さんとは、昨年(2020年)の第1回の緊急事態宣言の時、YouTubeライブでご一緒させていただきました。「今こそ仏教になにができるのか」をテーマに約90分、ぶっつけ本番の議論をしました。

そうですね。あの時と状況が違うのは、いまでは誰もが「自粛疲れ」を起こしてしまっているということです。1年前は「これからどうなるか分からない」といういわばパニック的な恐れがあった。いまとは少し状況が違いますよね。

― はい。

連日のコロナ報道。そして度重なる緊急事態宣言。ストレスがかからない方がおかしいですよ。

― 中にはストレスを自覚していない人もいるのでは。

いや、本当におっしゃる通りです。みんなが大丈夫だから自分も大丈夫。そう考える人が多いのですが、実はそうではないんです。日本国内、だれもがストレスを抱えている状態だと思います。みんな一緒にヤバいんだと、まずは自覚してほしいです。

― ゴールデンウィーク直前の緊急事態宣言。家族や仲間との外出を楽しみにしていた人たち、予定が狂わされた人たち、たくさんの人たちががっかりしています。

はい。心中お察しします。もちろん医療崩壊はあってはならないことですから、みんなが一丸となって新型コロナウイルスの感染拡大防止のために働きかけるべきで、これは島根県でも同じです。でも、その中でも楽しいことを見つけることが、やっぱり大事なんですよね。

誰もがいますぐできる 心のセルフケア

― メンタルヘルスということばが盛んに言われています。誰もがいますぐおうちでできる心のセルフケアには、どんなものがありますか?

はい。まずはよく寝ることです。これが心身の健康の基本です。

― はい。

そして、一定のリズムで生活すること。コロナ禍で会社や学校に行けないことで、生活のリズムを失った人がたくさんいます。これがよくないんです。

― 会社や学校に行くと、毎日同じ時間に同じことをしますよね。朝礼や、朝の会や。

そう。そういうルーティンワークがメンタルヘルスにとても大切です。家の中にいないといけない人も、朝の何時に起きるぞ。何時から筋トレをするぞ。何時から掃除をするぞと、ささやかでもいいので生活にリズムをつけてみてください。

― はい。

そして人とつながること。これもものすごく重要です。コロナ禍ですから人に会いに行きづらいのですが、たとえばいまこうして私と玉川さんはZoomでつながりあえている。これだけでも充分なんですよ。

― 武田さんがされているようなネットでのライブチャットに参加する、でもいいんですよね。

もちろんです。家族や友人に電話する。そういうささいなつながりでも、心を安定させるためにはものすごく効果があります。

 

この取材も「Zoom」を使って行われました。左が武田正文さん。終始穏やかにインタビューに応じてくださいました。

 

そして運動。これもね、できたらしてほしいです。

― 日光を浴びて、身体を動かすと気持ちがいいですもんね。

夜でも構いませんし、歩くだけの散歩でも構いません。外の空気に触れて、身体を動かすだけで心身がリフレッシュされます。

― よく寝る。生活にリズムを作る。人とつながる。運動する。この4つを実践することで、心の状態は大きく改善されるのですね。

楽しいことをやってみる ヒントは「ちょっと昔の娯楽」

あとですね、楽しいことをやってみるってのは、とっても大事なことなんですよ。ヒントはね、「ちょっと昔の娯楽」です。

― ちょっと昔の娯楽。

そうなんです。外に出れない。家にいなくちゃいけない。じゃあ家でできることで楽しんでしまおうということですよ。時間だけはたくさんあるわけですから。

― どんなことがありますか?

料理、洗濯、掃除、家の中で行う家事は捉え方ひとつですべてが娯楽になっていきます。茶道も華道も昔は武士や貴族の道楽だったわけです。私なんて、これまで全く興味がなかったなのに、やたらお寺の庭を手入れするようになりました。草抜き、草刈り、土いじり。

大自然に囲まれる高善寺境内(島根県邑南町)

― 休日はどこかに出かけなきゃいけないものと思っていた節がありますもんね。私もゴールデンウィーク、子どもたちとどうしようかなと悩んでいたところです。

一緒に絵を描く、宿題をするってのもいいと思いますよ。お父さんとお母さんが実は頭があんまりよくないことがすぐバレちゃう(笑)。あと、ゲームね。あれはいいですよ。僕はゲーム大好き。

― ゲームはよくない、なんていう声もありますよね。

やりすぎはね、よくないです。でもね、ストレス抱えているくらいならゲームして楽しい時間を過ごした方が絶対にいいですよ。親子でゲームなんて、最高じゃないですか。

― なるほど。

最近のゲームはね、よくできていますよ。考える力が養えますよ。プログラミングには『マインクラフト』、反射神経を鍛えるには『スプラトゥーン』『フォートナイト』、ほんわかするには『あつもり(あつまれどうぶつの森)』。経済も学べます(笑)

― うちの子ども、全部やってます。

ね。うちもですよ。『スプラトゥーン』なんて、息子にぜんぜん勝てない(笑) これらはもう教養だと思っていいですよ。僕ら世代の誰もが『マリオ』や『ドラクエ』をして育ってきたように。

― 私もやりました。教養だなんて考えたことないな。

少し話がそれましたが、これまで娯楽産業、レジャー産業というものが発達して、僕らは休日に外に出かけなくちゃと思っていた。でも、家にいながらでもできること、楽しめることって、たくさんあるんです。むかし家でやってたことをヒントに、それぞれのおうち時間を過ごしてほしいですね。

深刻だと思ったら、お医者さんに

― 明らかに自覚症状として不調が出ている場合は、どうしたらいいですか?

その場合は、お医者さまに見てもらいましょう。

― 精神科や心療内科というと、ちょっとハードルが高いという人もいるかと思うのですが…。

そういう人たちから耳にする声って、「薬がこわい」というのが多いんですよね。でも、いきなり重い薬を処方する先生なんていません。まずは軽めの薬から処方して、それだけで不調が改善されるケースもたくさんありますからね。下手にお酒飲んでストレス解消するよりも、ぜんぜん身体にいいと思います。

― はい。

中には心理検査をしてくれるところもある。心の中のどこに躓いてメンタルが不調になっているかを数値化、言語化してくれます。自分自身の苦しみを知るというのは、心理学でも、仏教でも、変わらず大切なことなのですよ。

― カウンセリングも有効ですか?

もちろん。対話や傾聴を通じて、心の不調の原因が分かる、症状が改善するということもあります。診断、投薬、カウンセリング、心理検査など、いろいろな方法で、自分自身の心と向き合い、復調へと向かわせてくれますよ。

― 中には、コロナ禍だからこそ、病院には行きづらいという人もいますよね。

そうですね。最近では、オンラインでカウンセリングをしてくれるところも、徐々にではありますが出てきています。また、必ずしも医師や専門家でなくてもいいんです。気の許す友人や家族、それこそ私たちのようなお坊さんでもいい。話しやすい人に心の内を話せたらいいですね。

― 専門知識よりも、親しさですか?

専門家の力が必要な時ももちろんあります。でも、親しい人に話を聞いてもらうだけで改善するケースも多々ありますよ。

話をする。人とつながるって、本当にだいじなことなんです。

こころねがおススメする動画。この記事を着想するきっかけになりました。『【コロナ禍のメンタルヘルス】ストレス?コロナ鬱?体調不良?心療内科と臨床心理学で解決!』(「武田正文の仏心チャンネル」より)

 

さて、ここまで武田さんが教えてくれた「いますぐ誰もができるメンタルヘルスケア」をまとめました。ポイントは7つ。

心の不調に苦しんでいる方、ゴールデンウィークをどのように過ごそうかと悩んでいる方、武田さんが教えてくれたことを参考にしてみてはいかがでしょうか?

次回は、コロナ禍社会をどう生きるか。仏教者の観点からお話しいただきます!


武田正文さんのYouTubeチャンネル「武田正文の仏心チャンネル」はこちらから。


構成・文 玉川将人