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開発スタッフに訊くロングセラー誕生秘話!「故人の好物シリーズ」の魅力(後編)
仏壇業界一番のロングセラー
そう言っても過言ではない
カメヤマの「故人の好物シリーズ」
魅力的な商品たちは
どのようなプロセスを経て
作られているのでしょうか?
その秘密を探るために
こころねはリモート取材をオファー。
4名の方に参加していただき
開発への想いを語って下さいました。
チャレンジ精神旺盛な社風
他商品とのコラボ
卓越した職人技
そして
リアルと燃焼への徹底的なこだわり。
これらのかけ算によってでき上がる
「故人の好物シリーズ」の舞台裏を
お届けいたします。
▶︎Zoom座談会に応じて下さったカメヤマ株式会社の方々。
【左画面】
近藤雅夫さん(大阪支店課長代理)
【下画面】
企画開発チームのみなさん(笠間さん、島さん、窪田さん)
【右画面】
玉川(素心メディア事業部)
前編がまだの方はこちらから!
戦前から溢れるベンチャーマインド
― カメヤマさんの「故人の好物シリーズ」は本当に人気が高く、もはや素心だけでなく仏壇業界の定番商品となっています。そこで今日はみなさんにお集まりいただいて、故人の好物シリーズの誕生秘話をぜひとも聞かせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
全員 よろしくお願いいたします。
― 故人の好物シリーズの前身は「美術キャンドル」なるものだと伺いました。
近藤さん はい。雑貨向けのキャンドルや、海外輸出向けのキャンドルなどです。たとえばリンゴの形のローソクなどはすでに製造販売してました。
― 会社の沿革を見てみますと、1937年にすでに美術キャンドルに着手されていますよね。
近藤さん そうですね。バースデーケーキなどでおなじみのスパイラルキャンドルも、当時のカメヤマの独自製品でした。その頃からいろいろな形のキャンドルにチャレンジしていたと聞いています。
笠間さん 神仏用のローソクが売れない時期があって、海外に勝機を見出したって、先輩から聞いたことがあります。
近藤さん カメヤマは固定概念にとらわれず、いろいろなことにチャレンジしてきた歴史がございます。
カメヤマ独自開発によるスパイラルキャンドル(提供:カメヤマ株式会社)
海外向けのアートキャンドル(提供:カメヤマ株式会社)
― 戦前からすでにベンチャーマインドに溢れていますね。ユニークなアイデアが出てきやすい社風なのでしょうか?
笠間さん 中途入社や女性社員も多く、社内にはボトムアップしやすい雰囲気があります。
― カメヤマさんから、故人の好物シリーズが生まれるのも頷けます。
「職人技✕コラボ」の掛け算がなせる技
– 故人の好物シリーズがたくさんの人に愛されているのは、カメヤマさんのチャレンジ精神に加え、卓越した職人技と他商品とのコラボの掛け算があってこそだと思います。
笠間さん ありがとうございます。
– まず、パッと見て驚かされるのは、精巧な蝋細工。
近藤さん その精巧さを出すために、好物キャンドルはすべて手作りで作られています。
− えっ⁉ そうなんですか?
笠間さん 型を彫るのも、蝋を流し込むのも、着色も、すべて手作業です。社内にそれらができる職人がいるのですぐに仕上げてくれます。おかげでさまざまな試作品にもトライできます。
― なるほど。そこがカメヤマさんの最大の強みですよね。
戦前期に発売されたアートキャンドル。カメヤマには、すでにさまざまなデザインのキャンドルを生み出す発想と技術がありました。(提供:カメヤマ株式会社)
− 2009年に始まった故人の好物シリーズ。第1弾は生ビールでした。すぐにヒットした、というわけではなかったのですよね。
近藤さん そうなんです。全く新たなローソクのご提案です。広まるにはやはり一定の時間がかかりました。売り場に屋台風のワゴンを設けたり、いろいろなチャレンジをしました。
− シリーズはどのように展開していったのですか?
島さん 生ビール販売の翌年の2010年から他企業様のヒット商品とのコラボを始めました。その第1弾がワンカップ大関でした。
ワンカップ大関ローソクは、まさにシリーズを代表する顔です。(「ワンカップ」は大関株式会社の登録商標です)
― 当時はまだ世間に浸透してなかったと思いますが、そんな中でコラボを持ちかけて、大関さんの反応はいかがでしたか?
近藤さん クオリティの部分で評価をいただきましたので、上手くいったものと思っております。
笠間さん ワンカップの場合、ガラスの容器も直接大関さんから仕入れさせていただき、リアル感にも徹底的にこだわったわけです。先人のことを思うと本当にすごいなあと思います。情熱を感じますね。
さまざまな趣向を凝らして販促を手がける。画像は屋台風の商品棚。(提供:カメヤマ株式会社)
― 異業種の商品を巻き込んだところに、このシリーズの魅力の核がありますよね。
島さん はい。ただしコラボを持ちかける以上、「ウィンウィン」にしないといけません。ご協力いただいた企業様のイメージや商品価値を下げることは絶対に許されないですから。
― そうですよね。
島さん 実際には、話がうまく進んでいたものの契約段階で断られたり、監修途中で「この香りではダメだ」とプロジェクト自体が頓挫したというようなこともありました。
ヒットの影に積み上がるたくさんの「ボツ」
― 毎年リリースするアイテム数は決まっているのですか?
窪田さん 決まっているわけではありません。企画段階ではたくさんのアイデアを出し合い、そこから、人気を集めそうなもの、技術的に再現できそうなものなど、ふるいにかけていきます。何に興味が集まっているのか。たとえばお酒のおつまみだったら何が人気か。さまざまな方法で情報収集します。対象となるお客様は女性が多いので、女性誌をめくることもしばしばです。
笠間さん 一般のお客様や営業を通じてお店からこんなのを作ってほしいと直接リクエストを頂くこともあります。
近藤さん 営業サイドは現場からいただいたお客様の声を商品開発スタッフに伝えるようにしています
– さまざまな方法でユーザーの声を集めるのですね。
窪田さん そうです。最近ではSNSでの投稿を考えて「映え」も意識しています。
− なるほど。
笠間さん 実際にサクマドロップスがTwitterでバズったことで、シリーズ全体の認知を高めてくれましたので。
― お店であっても、ネットであっても「映える」商品なのですね。
カメヤマの公式マスコット「ローソくん」と一緒に。(画像:カメヤマ公式Twitterより)
窪田さん でも、どうしても再現性が難しいものもあって、開発途中で断念したものもたくさんあります。
笠間さん たっくさん、あります(笑)
窪田さん ここまでずっとリアル感にこだわってやってきてるので、やっぱり中途半端なものは世に出せないです。
― 断念したものにどんなものがありますか?
窪田さん 焼き鳥。
― 焼き鳥⁉︎ 売れそうですけど、ダメでしたか?
窪田さん そうなんです。再現性という点で断念しました。ビールのお供として絶対に売れそうだったんですけど、焦げめとタレ感の表現がものすごく難しくて…。
笠間さん あとは、冷ややっこ。リアルに作れたのですが、逆にパンチがなかったです。「リアルだけど、これだけじゃ売れないよね~」って。
燃焼へのこだわり 火の揺らぎにこそ力がある
― 本当に、視覚と嗅覚でのリアルさに驚きます。こだわりがすごいですね。
笠間さん うちの職人は本当にプロフェッショナル。特にローソクの場合、見た目のリアル感だけでなく、燃えるところまできちんと考えてます。
近藤さん カメヤマはローソクメーカーですから、ぜひとも「火を灯してほしい」という想いがあります。
― たしかに見た目のリアル感が素晴らしいので、火を灯さずにお供えするだけ、というケースも少なくなさそうです。
近藤さん はい。でもやはり火の揺らぎにこそ、私たちの心を癒し、こちらの世界とあちらの世界をつなぐ力があると思っていますので。
窪田さん そのために、火を灯したくなるさまざまなデザインや工夫を考えているんですよ。
– 工夫?
近藤さん たとえば飲み物のキャンドルは、蝋が溶けて減っている姿が本当に故人様が飲んでいるようだと、たくさんの方からお言葉をいただいています。
窪田さん お寿司の中にはワサビを偲ばせていますし、おむすびキャンドルの中からは梅干しが出てきます(笑)
− こだわりっぷりが、本当にすごいです。
笠間さん おむすびって見た目は簡単そうなんですが、実は難しかったベスト3に入りますね。その理由は白の顔料。燃焼のコントロールがとても難しかったです。
― へえ。顔料によって燃焼の具合って変わるんですか?
笠間さん そうなんです。あと、おむすびの場合は梅干しが出てくるタイミングです。遅すぎるとお客様の興味が途切れてしまうし、早すぎてもお米に梅干しの赤が透けてしまいます。時間のコントロールが難しかったですね。
おむすびキャンドルはなんと梅干し入りのたくあん付き!(提供:カメヤマ株式会社)
ローソクの灯りとともに「ずっと、いっしょに、生きていく。」
― 長くたくさんの方に愛される故人の好物シリーズ。これだけのこだわりと想いが込められることを知れて、とてもうれしく思います。みなさんのお仕事や会社への愛着を、パソコン越しでも肌に感じることができました。本当に楽しそうに誇りを持ってお仕事をされていますよね。
窪田さん 毎回トライ&エラーで、売れない商品もたくさんあります。でも面白がらないといい商品は生まれないですよね。「ワクワク」を大事にしながら次の商品に向き合っていきたいです。
島さん そうですね。思わず「クスっ」と笑顔がこぼれるような商品を作っていきたいです。それがお客様やコラボで協力して下さった企業様双方の喜びになるのであれば、こんなにうれしいことはありません。
― 私たち素心の店頭でも、お客様との間に会話が生まれる商品です。
笠間さん カメヤマのローソク、線香を通じ、少しでも供養を身近に感じていただけるよう、これからも取り組んでまいります。
近藤さん ローソクは、お誕生日から、亡くなった人を天国へ向けて送り出すまで、節目となるさまざまな場面で灯されます。「ずっと、いっしょに、生きていく。」これがカメヤマのテーマです。素心様をはじめとする販売店様を通じて、多くのお客様にカメヤマの気持ち、想いをお伝えしていきたいです。
― 私たちも、素心に足を運んでくださるお客様に、自信を持ってみなさまの想いを伝えていければと思います。今日は本当にありがとうございました。
▶故人の好物シリーズのご購入は素心各店、または素心楽天店へ。
構成・文 玉川将人