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2021.10.25

本番目前!H1法話グランプリ2021の見どころを大会実行委員長に訊く。

本番目前!H1法話グランプリ2021の見どころを大会実行委員長に訊く。

お坊さんの法話を
じっくり聴いたこと、ありますか?

お寺の本堂で
あるいは葬儀や法事のあとに
お坊さんが語る法話には
2600年もの長い歳月をかけて積み上げた
仏教の智慧が込められています。

そんな法話を競うイベントが
10月30日、奈良から全国に向けて行われます。

「H1法話グランプリ2021」

宗派の異なる8組9人の若手僧侶たちが
個性豊かに法話を披露。
「もう一度会いたいお坊さん」を競います。
いったいどんなイベントなのでしょうか?

大会を目前に控え、実行委員長を務める
雲井雄善さんに伺いました。

※画像は2019年に行われた『H1法話グランプリ~エピソード・ZERO』で優勝した、長楽寺住職(曹洞宗・丹波篠山市)の安達瑞樹さんです。(提供:大会実行委員会)

H1法話グランプリ ここまでの歩み

H1法話グランプリ。まずはここまでの歩みを振り返ります。

2017年と2018年、栃木県の真言宗豊山派仏教青年会の研修成果のイベント披露として行われたのが始まりです。

2018年の11月には同じ「H1法話グランプリ」の名称で高野山真言宗の兵庫県青年教師会の中でも行われ、そののちに、超宗派での全国大会の構想が立ち上がります。

2019年6月に神戸市の須磨寺で開催された「H1法話グランプリ~エピソード・ZERO~」。チケットはあっという間に完売し、世間から大きな注目を集めます。

異なる7つの宗派のお坊さんたちによる個性豊かな法話。歌声に乗せ、紙芝居をめくり、さらには落語家顔負けの話術など、さまざまなスタイルの法話が披露されました。

イベントの模様はYouTubeでもライブ配信。アーカイブも残っており、こちらで視聴したという人も少なくないのでは。

2019年に行われた『H1法話グランプリ~エピソード・ZERO』。満員の会場内は熱気に包まれた。(画像提供:大会実行委員会)

2019年の大会をなぜあえて「エピソード・ZERO」と名付けたのか。今年の大会実行委員長を務める能福寺住職の雲井雄善さん(神戸市・天台宗)は「2019年の大会は、いわば『チームビルディング』でした」と話します。

「超宗派で大会を開きたいと有志のお坊さんたちが集まったものの、H1というものがどういうものか、誰もよく分かっていなかった。だから一度前哨戦が必要だったのです」

そのため「エピソード・ZERO」では予選会もなく、実行委員の人脈などから出場者を集めました。それでも大会は大きな反響を呼び、新聞やテレビなどでもその模様が報じられたほどです。

前哨戦を成功させたH1はさらに本格化。超宗派の、そして全国からエントリーを募る大会へと規模を大きくしていきます。

審査基準は「また会いたいお坊さん」

予選会には、45歳を上限とした若手僧侶38組40名が応募。そして選考会をくぐり抜けた8つの宗派(日蓮宗、融通念仏宗、浄土宗西山深草派、高野山真言宗、浄土真宗本願寺派、臨済宗妙心寺派、華厳宗、天台宗)の8組9名が本選に臨みます。

※今大会にエントリーされるお坊さんたちについては毎日新聞が特集記事を組んでいます。

一度にこれだけの異なる宗派の法話が聞ける機会はH1を置いて他に聞いたことがありません。チケットはすでに完売していますが、当日はYouTubeによるライブ配信も行われ、こちらはどなたでも視聴可能です。

会場には約700名の観客。その全員が審査員です。1人が3票を持ち、「どの法話がよかったか」ではなく、「また会いたいお坊さん」という審査基準のもとに投票します。

2019年に行われた『H1法話グランプリ~エピソード・ZERO』投票の様子。(画像提供:大会実行委員会)

雲井さんは、仏さまの教えが込められている法話に優劣は決められないとし、「『また会いたいな』と投じる一票が、仏教に触れるきっかけになればいいなと思います」と、投票がお坊さんや仏教への親しさにつながることを期待します。

大会実行委員長を務める雲井雄善さん

豪華な会場とゲスト審査員

今年の会場は奈良市にある「なら100年会館」。一流ミュージシャンのコンサートが行われるなど、古都奈良が誇る県下最大のホールです。

そしてゲスト審査員が驚くほどに豪華。審査委員長は多くの著書で知られる僧侶で宗教学者の釋徹宗さんが務めます。

そして審査員にはクリエイターのいとうせいこうさん、ロックバンドASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカルの後藤正文さん、僧侶で落語家の露の団姫つゆのまるこさんといった面々。さらにはキリスト教宣教師のクリスチャン・モリモト・ヘアマンセンさんも名を連ね、仏教とは異なる角度から法話を評します。

審査委員長の釋徹宗さん(画像:H1法話グランプリ公式サイトより)

審査員の先生は左から、いとうせいこうさん、クリスチャン・モリモト・ヘアマンセンさん、後藤正文さん、露の団姫さん。(画像:H1法話グランプリ公式サイトより)

「大会としての格がググっと上がった感がありますね」と伺うと、「私もビックリしています」と笑う雲井さん。その意図を次のように続けます。

「お寺を飛び出して、世間の人たちが集まりやすい場所で法話イベントを行うことに意味があると思います。また審査員の先生方についても、若い人や普段仏教に興味のない人にも聴いてほしいという想いからこのような顔ぶれになりました」

法話がもたらしてくれるもの

法話は私たちに何をもたらしてくれるのか。雲井さんは次のように話します。

「法話の原点はお経です。そこに書かれてある仏さまの教えは誰が読んでも同じ内容です。それを、それぞれの個性を活かして分かりやすく伝えるのが法話です。だから色んな形があっていいのだと思います。法話を聴くことで何かの救いになるかもしれませんし、一方ですぐに救われるとも限りません。でも法話の中のたった一言が、あなたの足元を照らす光の源になってくれます。H1をきっかけに『お坊さんもこんなことに取り組んでいるんだ』『お坊さんの話を聞いてみよう』『これまで気になっていたことを菩提寺の住職に相談してみよう』などと思ってもらえるだけでも、十分に意味があると思います。」

お釈迦様が生まれてから約2600年。仏教の法話には、長い長い年月をかけて積み上げた人々の苦悩と救いの物語がぎゅっと詰まっています。お坊さんの口から語られる法話が、あなたの心を癒し、苦しみを解き、自らを見つめなおすきっかけになるかもしれません。

H1法話グランプリ。先行きの見えない今の時代だからこそ、じっくりとお坊さんの言葉に耳を傾けてみませんか。2021年10月30日(土)13時。お時間のある方は、ぜひYouTubeにアクセスしてみてください。


▶「H1法話グランプリ2021」公式サイトはこちらから。

▶2019年に行われた「H1法話グランプリ~エピソードZERO~」公開動画はこちらから。

▶雲井雄善さんが住職を務めるのは「兵庫大仏」で知られる能福寺。公式サイトはこちらから。


構成・文・画像 玉川将人

 

 

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