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2021.07.03

空から星が降ってきた神仏習合の神社-大阪・星田妙見宮をたずねて(前編)

空から星が降ってきた神仏習合の神社-大阪・星田妙見宮をたずねて(前編)

神社とお寺。神道と仏教。
いまでこそ性格を異にしますが
かつてひとつのものとして融合していました。
大阪・交野市にある星田妙見宮は
今も神仏習合の名残をとどめる神社です。

1200年前。
交野ケ原の地に降ってきた北斗七星。
天から降ってきた星石は、
以来、妙見みょうけんさまとして
厚い信仰を集めてきました。

古代と現代をつなぎ、
宇宙と大地をつなぐ。
北極星とは。妙見さまとは。
神仏習合とは。

星田妙見宮の魅力を、
真言宗のお坊さんとともに
探してきました。

真言宗僧侶と仏壇屋、神社に参る。

姫路から車で約2時間。交野市の山あいの住宅街に星田妙見宮はあります。

「星田」と呼ばれるくらいですから、星との関わりがとっても深い星田妙見宮。そのはじまりは、真言宗の開祖である弘法大師空海がこの交野ケ原の地を訪れて、仏眼仏母尊ぶつげんぶつもそんの秘法(特別な修行)を修している時に天から降ってきた七曜の星(北斗七星)だと言われています。天と地をつなぐ磐座いわくら(信仰の対象となる石)はいまもご神体として神社に祀られています。

拝殿の奥にお祀りされる影向石(織女石)(画像提供:星田妙見宮)

 

ちなみに、大ヒット映画『君の名は』では空から隕石が降ってきますが、そのモデルとなったのも星田妙見宮だとも言われています。

星田妙見宮と素心をつないでくれたのは、星の道場・常光寺(佐用町)の樫本覚隆かしもとかくりゅうさん。

常光寺では毎年8月7日に「七夕星祭」を開催するのですが、星田妙見宮の宮司や神職を招いて神仏習合の護摩祈祷が行われます。神道の祝詞と仏教の読経が入り混じる祭礼が、まさに圧巻だったのです。

常光寺七夕星祭による護摩祈祷(2020年:著者撮影)

そこで、樫本さんにお願いして今回の取材が実現しました。

この日は樫本さんの先輩僧侶である宝珠寺住職の西蔭岱孝にしかげたいこうさん(神戸市)とそのお子さんも同行。真言宗の僧侶と仏壇屋が神社にお参りする、まさに神仏習合のふるさとを訪ねる旅となりました。

手前が常光寺(佐用町)の樫本さん。奥が宝珠寺(神戸市西区)の西蔭さん。

神社の拝殿でみんなで揃って般若心経。神仏習合が違和感なく行われる。

神さま? 仏さま? 神仏習合を整理する

ところで、神仏習合とはいったい何のことでしょうか。まずはその基本を押さえましょう。

神道とは日本固有の土着神への信仰、そして仏教はインドや中国を経てやってきた外来の宗教です。

仏教が日本に伝来してからというものの、両者はうまく融合しました。神社の中にお寺があったり、神前で仏教のお経が読まれたり、神に菩薩(仏教における修行者の尊称)号を授けたり、こういうことが違和感なく行われていたのです。

ところが、明治政府の神仏分離令によって、神社では仏さまを公然と祀れなくなりました。妙見さま(妙見菩薩)を祀る日本中の神社が妙見菩薩と御同体とされる「天之御中主大神あめのみなかぬしのおおかみ」をご祭神(中心となって祀られる神様)をとして、現在に至るのです。

さて、妙見さまとは北極星を神格化した御尊格です。仏教では「妙見菩薩」ですが、神道では「天之御中主大神あめのみなかぬしのおおかみ」、陰陽道では「鎮宅霊符神ちんたくれいふしん」とされています。名前こそ違うものの、「仏教の妙見菩薩=神道の天之御中主大神」と思っておけばよいでしょう。

神社なのに仏具が自然に置かれている。

境内にある「登龍の滝」には不動明王さまが祀られています。(画像提供:星田妙見宮)

住宅街の中から突如現れる千年の森

星田妙見宮は狭い新興住宅街をくぐりぬけた先に突如現れます。はじめは「こぢんまりとした神社なのかな」と思いましたが、その森は奥が深く、拝殿のある山頂までは200段を超える階段と坂道。もはや軽い登山です。

境内の参道沿いに建てられたさまざまなお社。北斗七星の7つの神様は干支を司り、それぞれ各所に祀られています。ちなみに筆者は酉年なので守護星は文曲星もんごくしょう。「オンイリダラタウン」とご真言をお唱えしました。

山頂からは市街が一望。清らかな森の空気の中、ここまで登り切っただけですでに心は晴ればれです。

妙見信仰 北極星は万物の源

さて、この世界を構成する大切な星として、みなさんは何を思い浮かべますか?

ほとんどの人はまずはじめに、太陽と月を思い浮かべるのではないでしょうか?

しかし、「万物の源は北極星なのだ」と宮司の佐々木久裕さん(69)は話します。地球上から見るとほとんど動くことのない北極星。そして北の空の星たちは北極星を中心に周っているように見えます。そのため、古くから正しい方角を見つける夜空の印として利用され、神格化されてきたのです。

「古代中国では北極星(北辰)は天帝とみなされ、まずすべての源として北極星があるとしました。そしてこの世にエネルギーを送り込んでくるのが太陽、癒しを司るのが月です。しかし、太陽や月をはじめとするすべての星は、北極星を中心に運行しています」

宮司の佐々木久裕さん(右)と、長男の佐々木悠介さん(左)

その証として佐々木宮司は『古事記』を例に出します。

『古事記』ではイザナギとイザナミによって国生みが行われます。そしてイザナミの死後、イザナギが黄泉の国の穢れを禊ぐことによって、アマテラスという太陽の神さまと、ツクヨミという月の神さまが生まれます。つまり、物語として太陽と月が登場するのは、だいぶあとの方なのです。

では、一番はじめに登場する神様はだれかというと、そう! 天之御中主大神あめのみなかぬしのおおかみなのです。古事記の書かれ方からも、太陽や月よりもまず先に、北極星の光があったことを物語っています。

「妙見菩薩の教えとは、諸法の実相を知見するということ」と佐々木宮司。「この世のすべてのもの、森羅万象は、肉眼だけではダメで、心の目を使わないと本当の姿は見えません。だからあなたの心を研ぎ澄ませて、あなたの眼で実相を見極めなさい。これが妙見の教え」とのこと。

なるほど。こんな清らかな場所に来たら、心も洗われ、感覚が研ぎ澄まされるような気がします。妙見菩薩がこの地に降り立ったことが頷けるほどに、澄んだ場所、そして素敵な人柄の宮司さんなのです。

拝殿にも上がり、特別祈祷までしていただいたわれわれ一行。後編では、荒れ果てた神社を立て直すまでのご苦労を、佐々木さん親子自らがお話し下さいました。星田妙見宮ファンの方は必見のインタビューです!


星田妙見宮では、夏恒例の祭儀である「七夕祭」(7/7)と「星降り祭」(7/23)を行いますが、今年(2021年)は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参列はできないものの、特別祈祷は厳修されます。ご祈祷を希望される方は星田妙見宮にお問い合わせ下さい。

▶星田妙見宮HPはこちらから

佐用町の常光寺では星田妙見宮とのコラボである神仏習合の「七夕星祭」(8/7)を決行予定。神と仏の垣根を超えた、圧巻の護摩祈祷にお参りください。

▶常光寺HPはこちらから


構成・文・撮影 玉川将人

 

 

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