こころね

あなたとお寺をつなぎたい!‐毎日新聞社「つなぐ寺」を突撃取材(前編)

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素心「こころね」が
ひそかに同志と抱いている
メディアがあります。
毎日新聞社「つなぐ寺」

法話を精力的に動画配信する
お坊さんを取り上げるWebサイトです。

なぜ大手マスメディアが
仏教に力を入れるのか。
素朴な疑問と大きな共感を
ずっと感じていました。

大阪梅田にある
毎日新聞大阪本社に突撃取材。
取材に応じて下さったのは
プロジェクトチームの3人。
前編では、つなぐ寺の立ち上げについて
詳しくお伺いしました。


▶取材に応じて下さった「つなぐ寺」プロジェクトチームの3人です。

(左)藤原禎恵さん(大阪事業本部事業部)
(中)花澤茂人さん(編集局学芸部)
(右)濱弘明さん(大阪事業本部次長)

つなぐ寺に、先を越された!

― 今日はお忙しい中、お時間をとっていただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

全員 よろしくお願いいたします。

― 実は、つなぐ寺さん。私、勝手に同志だと思っています。

全員 へえ。

― つなぐ寺さんが始まったのが2020年の12月。私は10月にメディア事業部を立ち上げて、早く記事の配信をしたかった。でもサーバーの移行やら新しいページの下準備やらでもたもたしている内に、つなぐ寺さんを知ったんです。「うわあ!毎日新聞も同じことやってるぞ。先を越されたぞ」と。

全員 (笑)

そしたらなんと、姫路の小林恵俊さん(天台宗・正明寺)のインタビュー記事が公開されている。これは完全に私の頭の中を先にやられているなと。スパイでもされましたか?

花澤さん (笑)

― こちらも年の明けた2021年2月3日になんとかサイトを立ち上げて、その月末に恵俊さんのインタビュー記事を公開しました。

花澤さん 拝見しました。とても深く取材されていて、いい記事でした。

― ありがとうございます。新聞記者の方に言われるとものすごく恐縮なのですが…。そういう経緯もあって、大手メディアである毎日新聞さんがなぜ仏教に力を入れようとしているのか、素朴な疑問と大きな興味共感があったのです。

花澤さん なるほどなるほど。

 

H1法話グランプリの後援と、つなぐ寺の立ち上げ

― まずは、つなぐ寺がどういう経緯で立ち上がったのか、教えてもらえますか?

濱さん そのためには、まずは花澤さんの「素地」を話さないといけないですね。

花澤さん そうですね。私はもともとお寺が大好きで、初任地の奈良や、その後の京都などでもいろんなお寺や神社を取材してまわりました。大阪本社の学芸部に配属になってからも宗教は私にとっての大きな取材テーマだったんです。

― はい。

花澤さん その流れで、最近YouTubeで法話を配信しているお坊さんがいるってことで、須磨寺の小池陽人さん(神戸市・真言宗)に取材に行き、「H1法話グランプリ」というものを知ることになります。

花澤茂人さん。「つなぐ寺」の発起人です。

― 漫才のM1でも、ピン芸人のR1でもない、お坊さんのH1、ですね。

花澤さん はい。「H」とは法話のことで、法話で『また会いたいお坊さん』ナンバーワンを決めるコンテストです。このイベントをなんとか毎日新聞社として後援したいなと思い、部署は全然違うんですけど社内で私が信頼している仏教好き仲間の藤原さんに相談したんです。

藤原さん 私は事業部の人間で記者じゃないんです。大学で仏教美術を学び、社内では仏像の展覧会などのイベント企画を手掛けています。そんなこともあり、お互いに仏教好きでつながりがありました。

花澤さん そして、私のかつての上司であり、藤原さんのいまの上司である濱さんにも加わっていただいて、つなぐ寺のいまのチームができたんです。

― H1法話グランプリの後援から、つなぐ寺の立ち上げまでは、どういう経緯があったのですか?

花澤さん 社内で新事業のアイデアコンペがあって、それに手を挙げたんです。お寺に関わる何か面白いことをやってメディアを立ち上げたいと。それがつなぐ寺の構想でした。

つなぐ寺~お寺と出会うポータルサイト~

― サイトを見て思ったのは、「ああ、めちゃくちゃ本気だな」と。お金もしっかりかけておられる。

全員 そう、そうですかねえ?

― えっ? そうでもないんですか?

藤原さん そのように受け取って下さったのならものすごく光栄なのですが…。

濱さん 力は入れてますけど、お金はそんなにかけてないですよ(笑)

― そうでしたか。でもそれは大手マスコミさんと、地域密着の仏壇店の金銭感覚の違いかと…(笑)

全員 (笑)

― でも、片手間でやっている感じはなかったです。ああ、本気なんだなと。

花澤さん そうですね。片手間ではなく、ちゃんとした想いを持っていることはホームページ上で表現したかったですね。

つなぐ寺ってどんなサイト?

― つなぐ寺ってどんなサイトか、改めて教えてもらえますか?

花澤さん お寺と出会うことのできるポータルサイトです。主に動画配信に精力的なお坊さんをご紹介しています。人間関係や生きることに苦しんでいる人とお寺をつなぐメディアを目指しています。

― いやあ、すごい! こころねと同じです。

藤原さん もうひとつがイベントの開催です。「つなぐ寺」という名前の通り、仏教とあまり縁のない人たちにお寺とつながっていただきたいという想いがあります。「お寺ってこんなに素晴らしいんだ」と知ってもらうためのイベント開催ができるとかなと。私は事業部にいて普段の業務でもイベント企画もしているので、そのあたりも強みでないかと考えます。

― Web配信とイベント開催の二軸が、つなぐ寺の柱なわけですね。

藤原さん はい。ただしつなぐ寺のスタートとほぼ同時に新型コロナウイルスが襲ってきたので、リアルイベントは満足に開催できていません。その分オンラインイベントも手掛けています。

藤原禎恵さん

― 毎日新聞さんくらいの規模の会社であれば、もっとたくさんのお坊さんを掲載できると思うのですが、そこは慎重ですよね。人選に手間をかけているんですか? それとも単純に忙しくて時間がないとか?

花澤さん 両方です(笑)

― それぞれの部署での通常業務もあって、お忙しいですもんね。

花澤さん ただ、動画配信さえしていればどのお坊さんでも構わないというわけではありません。まずは直接知っているお坊さんに限らせてもらうというのが、つなぐ寺の基本スタンスです。お話の内容も信頼できて、応援したくなるような方をご紹介していこうと。

― 信頼できる方を紹介していく信頼あるメディアを目指しているのですね。

花澤さん そうです。そもそもドォーっとお坊さんの数を増やしていくつもりはないんです。つなぐ寺に載せたからってお坊さんからお金をもらうシステムでもないので、あんまりたくさんの人を掲載することにメリットもありません。素敵な方を、少数精鋭で紹介していくメディアになればいいかなと思っています。

オンラインイベント「法話新時代!」配信の模様。

終活・エンディング業界に足が向く新聞社の事情

― 読売新聞社は医療や介護に特化したWebメディア『ヨミドクター』を運営し、産経新聞社は『終活読本ソナエ』を出版しています。そういった新聞業界の潮流はあるのですか?

藤原さん そこまで他紙さんを意識したわけではないです。新聞の読者はご高齢の方が多いので、そういう方をターゲットとした特集記事などの取り組みはありますけど、毎日新聞社としてお寺や終活に特化した独立メディアは持っていませんでしたね。

― 仏教やお寺はまだ手つかずで、あえてそこを狙ったのかなと思っていましたが、そういうわけでもないのですね。

濱さん 新聞購読そのものが減っていますし、新聞の配達地帯を支えていた地域社会もどんどん希薄化している。これを別の形で支えられないか、その一環でネット事業に力を入れていこうという想いは、たしかにあります。他紙さんに関しては、きっと同じ部分で苦労しているのかなって感じで、眺めています。

濱弘明さん

お坊さんの話は、心にしみる

― つなぐ寺にアクセスする人の年齢層は?

藤原さん ページへのアクセスも、オンラインイベントへの参加も、40代以上の中高年の方々が多いですね。

― 40代以降の人にとって小池さんや恵俊さんのような30代の若いお坊さんはどのように映るのでしょうか? 韓流スターを見るような推しメンなんですかね?

藤原さん (笑)そういう感じじゃないと、思いますよ。

花澤さん 小池さんはファンが多いし、恵俊さんはポテンシャルが高い。いずれも法話がいいんです。

藤原さん イベントの感想などを聞いていると、法話の意味するところやお坊さんたちの想いを感じ取ろうとするファンの方が多い印象です。

― 話の内容。立ち居振る舞い。かもしだす雰囲気ですね。

藤原さん そうですね。お坊さんの話は、心にしみる。そういう感じですかね。

「普段取材されることなんてないです」と笑いながら写真撮影にも応じて下さった3人。とっても仲がいい。

それぞれが通常業務をこなしながらのプロジェクトチーム。多忙な中、確実に、そして丁寧に、仏教やお坊さんの魅力を伝えたい。そんな想いが伝わってきました。

後編では、新聞社の社員として、そして一個人として、3人にとっての仏教とは、これからの社会で仏教が果たせる役割について、語っていただきました。

 

後編「なぜ毎日新聞は仏教に力を入れるのか


▶毎日新聞社「つなぐ寺~お寺と出会うポータルサイト~

▶︎H1法話グランプリ2021。今年は10月30日に奈良市の「なら100年会館」にて開催されます。公式サイトはこちらから!

※本記事の取材は令和3年7月7日に行われました。写真撮影以外の場面では、マスクの着用やソーシャルディスタンスなど、新型コロナウイルス対策を講じております。


取材・文・構成 玉川将人