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2021.07.04

宮司が語る神社再興秘話。すべてを投げ打って妙見さまに心血を注いだ40年-大阪・星田妙見宮をたずねて(後編)

宮司が語る神社再興秘話。すべてを投げ打って妙見さまに心血を注いだ40年-大阪・星田妙見宮をたずねて(後編)

荒廃した神社を立て直すために脱サラし
すべてを投げ打って心血を注いだ
宮司・佐々木久裕さんの40年。

父のうしろ姿を見続け
自らも神主として生きることを決めた
長男の悠介さん。

星田妙見宮が霊験あらたかなのは
神仏の力だけでなく
そこに携わる佐々木さんと
ご家族の熱意にほかなりません。

「この素晴らしい場所を
一人でも多くの人に知ってほしい」

1200年前に天から降ってきた磐座を前に
再興までの道のりと
神社への想いを伺いました。

荒廃した神社を立て直す ここが命をかける場所

いまでこそ、関西随一のパワースポットとしてたくさんの参拝者が集まる星田妙見宮。しかし、宮司の佐々木久裕さん(69)がやってくるまでは、荒廃しきっていたそうです。

「このお社も、風が吹きすさび、落ち葉がたまり、埃だらけ、提灯一つないですし、裸電球もひび割れていた、ひどい有様でした」と佐々木宮司。

自身の先祖が江戸時代に3代に渡って妙見さまを信仰していたことを知り、妙見さまとはなんだろうとこの地を訪ねたのが始まり。山に足を踏み入れた瞬間に「ここはなんてすばらしい場所なんだろう」と感激したのだそうです。

「この場所を一人でも多くの人に知ってほしい」そう思い立ち、30歳で会社を辞めて、神社の世界へ飛び込みます。13年間無職を貫き、近隣の神社の祭礼、龍笛を学んで雅楽の演奏など、さまざまなアルバイトをこなしてなんとか生計を立てました。夫人を連れての脱サラ。「それでもまったくこわくはなかったです」と佐々木宮司。当時の心境を次のように語ります。

「人間って、ある時期に自分の命をかけたいもの、追い求めたいものというのが現れる。ここが私の命をかける場所だと感じました」

 

1995年当時の参道(画像提供:星田妙見宮)

1995年当時の拝殿(画像提供:星田妙見宮)

3万平米を超える星田妙見宮。境内の維持は一筋縄では行きません。

「普段は土方仕事ですよ。草刈りや竹切りの日々。息子は今日もチェーンソーで木を切ってました」と、2018年の台風21号による爪痕はいまも癒えず、倒木や土砂崩れの後始末に追われる日々の苦労を語ります。

「ご祈祷の方が来られたら階段を駆け上がります。袴に穿きかえる時間なんてありません」と、息子の佐々木悠介さん(29)。

「一瞬たりとも気を抜くことのできない40年間でした。信仰は続いても、神社やお社は一瞬でつぶれてしまう。神社にどれだけの想いを込めて守っていくかが大切ですけど、苦労と不安が多いため、息子に継がせるつもりはなかった」と佐々木宮司。しかし悠介さんの方では、あとを継いで、神社を守っていこうと考えていたそうです。

「父のうしろ姿を見て、自分もこの神社を守っていきたいと思いました。それまではあんまり神社に関心を持っていなかったですが、神主の資格を取るときにさまざまな神社を見てきた中で、やっぱりこの妙見さんってすばらしいとこなんだなと再認識しました。ずっとここを守っていきたいですね」と、次代を見据えて力強く語ります。

宮司の佐々木久裕さん(右)と、長男の佐々木悠介さん(左)

かつては授与品を入れる袋すら買えなかったほどに困窮していましたが、それでもお金に困ることはなかったそうです。

「本当にありがたいことに、お金が足りない時は誰かが支援して下さり、なんとか神社をつないでいくことができました。逆にお金がある時は支出が増えるのですけどね(笑)うまくできています」と、すべての計らいを神様の力に委ねます。

どんなに貧しい時も、神社には必ず人がいるようにしました。たった一人の参拝者だとしても、その人に妙見さまの教えに触れてもらうため、絶対に無人の状態にはしなかったと話します。

佐々木さんの努力によって神社は少しずつ再興し、いまでは関西随一の人気を誇る神社となっていったのです。

現在の参道

現在の拝殿(画像提供:星田妙見宮)

毎年7月7日に行われる七夕祭には、願い事が込められたたくさんの短冊が参道を彩る(画像提供:星田妙見宮)

 

神道仏教の区分けにとらわれず、本当の信仰を守っていく

星田妙見宮では密教の儀礼である護摩焚きもし、不動明王の滝もあります。仏教寺院に出向いて護摩法会にも参加する佐々木宮司。神仏習合に関してその真意を伺いました。

「神道と仏教という区分けにとらわれずに、本当の信仰とは何かを考えています。私個人は1200年続くこのお社の信仰を守りたいという想いでご奉仕しています。この神社にはこの神社でご先祖様がつないできた教えがある。古くからこの神社で行われてきた方法を受け継いで、それを守っていくだけです」

星田妙見宮は、府内だけでなく、関西一円さらには全国から参拝客が集まる神社です。兵庫県からもどうぞお参りください。

階段と坂道を上った先に、心洗われる素晴らしい神域が広がります。その神々しさは、妙見菩薩さまの妙力と、神社に携わる人たちの世代を超えたつながりによって、千年後を生きる人たちの心をも照らしているはずです。


星田妙見宮では、夏恒例の祭儀である「七夕祭」(7/7)と「星降り祭」(7/23)を行いますが。今年(2021年)は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参列はできないものの、特別祈祷は厳修されます。ご祈祷を希望される方は星田妙見宮にお問い合わせ下さい。

▶星田妙見宮HPはこちらから

佐用町の常光寺では星田妙見宮とのコラボである神仏習合の「七夕星祭」(8/7)を決行予定。神と仏の垣根を超えた、圧巻の護摩祈祷にお参りください。

▶常光寺HPはこちらから


構成・文・撮影 玉川将人

 

 

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