こころね

ネットとリアルの行き来から見えるもの-お坊さんTikTokerが語るお寺とネットの未来(後編)

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YouTubeとTikTokで人気を集める
僧侶・小林恵俊さん
一方でお寺の副住職を務めます
ネット空間とお寺を行き来しつつも
そのベースには
「お檀家さんのために」という想いがあります
30歳を迎えた青年僧のリアルな胸の内を
ゆっくりと、丁寧に、
語っていただきました

 

前編はコチラ!→なぜ若者は仏教の法話を聞きたがるのか-お坊さんTikTokerが語るお寺とネットの未来(前編)

 

お寺に生まれたことの引け目とありがたさ

 

— お寺に生まれてお寺に育ちました。お寺を継ぐことに抵抗はなかったですか?

なかったですね。ただ、積極的に「こんなお坊さんになるぞ」というような想いもなく、当たり前な流れとして、僧侶になるんだろうなと思っていました。

— どんな少年でしたか?

ぼーっして生きていましたね。友達ともそこまで深い話をする感じではなかったですし、自分の未来についてもしっかりした考えを持っているわけではありませんでした。

— そうですか。

ただ、叡山学院(天台宗の僧侶養成学校)に行ってから、自分自身を深く見つめるようになっていきましたね。

— 具体的に、どんなことがあったのですか?

同期に恵まれていました。特に在家からやってきた人の熱量がすごくて、刺激になりました。

— 在家とは、お寺ではなく一般家庭出身の方のことですよね?

はい。お寺に生まれた者と違い、在家出身の人は自分の意志で仏門を叩いている。師匠を探すところから始めるんです。スタート地点からすでに志が高い。

— 引け目みたいなものは、ありましたか?

あの頃は、ありましたね。

— でも、自分の出自や境遇は、人と比較しても変えられないですよね。

はい。

— どのように受け止めていかれたのですか?

そもそも学ぶ対象が仏教という自分の内面と向き合うものですから、叡山学院での日々の中で、自分を客観視できるようになり、学院で学ぶごとに仏教が面白くなりました。あと、早くからお参りをさせてもらっていたのが大きかったですね。

— と言いますと?

土日には姫路に帰ってきて、お寺のお檀家さんのお参りや法事を行っていたんです。まだ駆け出しでなかなか慣れない。学院で学んだことだけでは上手くいかなくて、自信を失くしました。

— そうですか。

ところが、学内の布教大会では同期たちと比べて思いのほか上手くいき、これが自信になったんです。お檀家さんへのお参りや法事を通じて、知らないうちに力がついていたのだと思います。

— それは、お寺に生まれたからこそできた経験ですよね?

はい。ありがたく思います。

 

 

静かなる野心

 

— いまは、どんどん新しいことにトライしている。そのモチベーションはどこから?

実は、あんまり自分で物事を決めて生きていないんですよね。周りの影響がとても大きいです。

— まわりの影響と言いますと?

僧侶になったのも家がお寺だったからですし、中学と高校ではギターマンドリン部に入ったのですが、それも友達の誘いでした。高校途中から始めたエレキギターも、友達に誘われてのものでした。

— ちなみに、エレキギターではどんなジャンルの音楽をされてたのですか?

メタルです。

— メタル!

ええ。メタルです。バンドをやったことで人前に出ることへの抵抗が薄まりました。

— なるほどです。

若かりし日の恵俊さん。本人曰く「髪を伸ばしただけのオタク」(画像提供:小林恵俊さん)

 

僧侶になったあと、たとえば「H1法話グランプリ」の出演や、TikTokも、周りの僧侶の方のお誘いでした。

— 積極的な野心があるわけではない。でも、自分のもとにやって来た流れには乗っかってみよう。そんな思いきりのよさを感じます。

そうかもしれないですね。

— だって、YouTubeなんてなかなかできないですよね。忙しいし、恥ずかしいし、「あなたの語っていることは間違っているぞ」と、周りからの指摘もあるでしょうし。

はい。

— 「静かなる野心」を秘めていますね。

SNSをやっているお坊さんは、お寺の世界だけで見ると、異端な人たちばかりが集まっていますよ。

— 異端、ですか?

ええ。ネット空間に偏りすぎてもいけませんが、でも、やっぱり異端は面白いですね。

— 異端同士、共感し合えるところが多いのではないですか?

そうですね。宗派を超えたつながりには、お寺にいるだけでは体験できない出会いや気づきがありますね。

21世紀の仏教のキーワードになるであろう「超宗派」。恵俊さんの動画はじめ、YouTubeの中ではさまざまな宗派を超えたコラボ動画が上げられている。

 

ことばは、丁寧に選ぶ

 

— 「フォロワーの数は銃口の数」と言われていましたが(前編)、語ることばは慎重に選ばれていますか?

はい。

— 炎上も、あり得ますもんね。

SNSはみんなが見ています。それこそお檀家さんもです。だれかを傷つける可能性のあることばは控えています。

— 撮影の前にも台本を作り込んでいるのですか?

はい。話すことばは丁寧に選びますね。作り込んでない時も、編集でカットしたりします。でもそれはネットだけのことでなく、普段お檀家さんと喋っている時でも同じですよ。

— ネットも、リアルも同じ?

はい。同じです。

— 恵俊さんの動画の魅力は、そのやさしくておだやかな雰囲気。ゆっくりと丁寧に話すことばと。そして、落ち着いた声にあるように思います。

ありがとうございます。

— そして、受け手への配慮。でもそれはきっと、YouTubeでも、TikTokでも、お檀家さん相手でも、変わらないスタイルなんですよね。

変わらないですね。

— YouTubeやTikTokでも、キャラ作りや過剰な演出も特にない、自然体のままの恵俊さん。そこに多くの人が引き寄せられているのだと思います。

ただ、サメくんというキャラに助けられていますけどね。

 

活動のベースはお檀家さんのために

 

— YouTubeやTikTokで活躍する反面、お寺の副住職でもある。ネットとリアルを行き来していますが、お檀家さんからはどんな反応がありますか?

— 数人の方には見ていただいていて、「応援しているよ」「通知をオンにしているよ」など、ありがたいことばをいただいています。ただ、多くのお檀家さんはYouTubeを見ていないし、やっていること自体を知らないという人もたくさんいます。

— そうですか。

でも、こちらから無理に「YouTube見てくださいね」「Twitter見てくださいね」と言うのも違うと思うし、そうしたって見てもらえないものです。自然な形で出会ってもらいたいですし、そのためには地道な積み重ねが大切です。

— お檀家さんとの関係づくりとネット配信。双方においての地道な積み重ねですね。

そうですね。逆に、動画配信やSNSで学んだものをお檀家さんに還元していければなあとも思います。

— YouTuberやTikTokerの側面ばかりがフォーカスされています。ネット上での布教ですから、「外に広く」という意識が強いのかと思っていましたが、まずはお檀家さんを大切にしているのですね。

はい。お檀家さんあってのお寺ですからね。

 

お檀家さんとお寺との関係がよく分かる素敵な動画。スピンオフ企画とはいえ筆者おすすめの1本。

 

— 今日は本当にありがとうござました。

こちらこそ、ありがとうございます。

― 2月23日で晴れて30歳です。これからどんな僧侶を目指しますか?

もっと「この人に相談してみよう」と思ってもらえる僧侶になっていきたいですね。いまはまだ、法話にしろ、YouTubeやTikTokにしろ、一方向的な発信しかできていないと思います。ネットでも、お寺でも、いろんな方との会話を通じて、仏教やお寺の魅力を感じてもらいたいですね。

長時間にわたり、本当にありがとうございました。

 

小林恵俊さんの手掛けるYouTube、TikTokはこちらから!
Twitterからも積極的に配信されています。

YouTube僧侶えしゅんのサメに説法
TikTok「えしゅんお寺の1分法話
Twitter @esyunsyomyoji
正明寺HP(姫路市:天台宗)

 

構成・文 玉川将人
撮影 西内一志